← Library‹ 超人ニコラ ニコラ博士の秘密

ああ、ごらんなさい。はれわたった月光げっこうの空そらを、黒くろいマントをひるがえした、スーパーマンが、とんでくるのです。

これこそニコラ博士はかせにちがいありません。博士はかせのほかに、空そらをとべるやつがあろうとは思おもえないからです。

両手りょうてをグッと前まえにつきだして、風かぜをきってとぶスーパーマンは、お堂どうの上うえまでくると、その屋根やねのまわりを、グルグルと、まわりはじめました。地上ちじょう五十ごじゅうメートルほどの高たかさです。ニコラ博士はかせは、そこから、下界げかいのようすを、見みとどけようとしているのです。

敵てきは、高たかい空中くうちゅうにいるのですから、どうすることもできません。ピストルを撃うとうにも、あまり高たかいので、もしあいてを、ころしてしまうようなことがあっては、たいへんですから、それもできないのです。

ニコラ博士はかせは、こちらをばかにしたように、いつまでも、お堂どうの上うえを、グルグル、グルグル、まわっていましたが、やがて、むこうの森もりのような木立こだちの上うえへとんでいって、姿すがたが、見みえなくなってしまいました。

「森もりの中なかにおりたのかもしれないぞ。」

少年しょうねんのひとりが、大おおきな声こえでいいました。

いまに、こちらに出でてくるだろうと、みんな、ゆだんなく、まちうけました。小林こばやし君くんはピストルをかまえることをわすれませんでした。

しかし、いくらまっても、ニコラ博士はかせは出でてくるようすがありません。どこかへ、とびさってしまったのでしょうか。それとも、森もりの中なかにおりて、なにかたくらんでいるのではないでしょうか。

みんなはもう、まちきれなくなりました。

「森もりの中なかにはいって、ようすを見みることにしよう。」

小林こばやし君くんは、とうとう、しびれをきらして、森もりの中なかにはいってみる決心けっしんをしました。明智あけち探偵たんていもいっしょにいってくれることになりました。

少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんたちは、みんな小型こがたの懐中かいちゅう電灯でんとうをもっていますので、てんでに、それをふりてらしながら、まっくらな森もりの中なかにはいっていくのです。小林こばやし団長だんちょうはピストルをにぎって、先さきに立たっています。

ひとかかえも、ふたかかえもあるような、大おおきなヒノキなどが、たちならんでいます。

懐中かいちゅう電灯でんとうはたくさんあっても、みんな万まん年ねん筆ひつ型がたの小ちいさいのですから、たいして明あかるくはありません。いやにチロチロして、なんだか、そのへんに、あやしいやつがかくれているような気きがします。

木きのみきから、木きのみきを、グルグルまわって、すすんでいきましたが、森もりのまんなかへんにきたとき、とつぜん、ガサガサという音おとがしたかと思おもうと、先さきに立たっていた小林こばやし君くんの頭あたまの上うえから、なにか大おおきなものが、サーッとおちてきました。

アッというまに、小林こばやし君くんは、そこにたおれていました。

「だれだっ。きさま、ニコラ博士はかせだなっ。」

小林こばやし君くんは、大声おおごえにさけびましたが、ふと気きがつくと、右手みぎてににぎっていたピストルが、ありません。

「ワハハハハハ、いかにも、おれはニコラ博士はかせだ。小林こばやし君くん、きみのピストルは、いまもらったよ。こっちのは、おれのピストルだ。つまり二に梃ちょう拳銃けんじゅうさ。きみたちは、だれももうピストルはもっていない。こうなったら、おれの命令めいれいにしたがうほかはないね。さあ、そこをのくんだ。ニコラさまのお通とおりだ。」

少年しょうねんたちは、みんな、あとじさりをして、道みちをあけました。コウモリのようなマントをきた、白しろひげのニコラ博士はかせは、ゆうゆうとその間あいだをとおって、森もりの外そとに出でていきました。

だれもてむかうものはありません。少年しょうねんたちがおそれをなしたのは、むりがないとしても、名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうは、いったい、どうしたのでしょう。ふしぎなことに、そのへんに、姿すがたが見みえません。まさかにげだしてしまったわけではないでしょう。いや、にげだすどころか、そのとき、明智あけち探偵たんていは、ニコラ博士はかせに気きづかれぬよう、ある場所ばしょで、ひじょうにだいじな仕事しごとをしていたのです。

森もりを出でたニコラ博士はかせは、お堂どうの前まえに立たっていた園田そのださんのそばへ、両手りょうてにピストルをかまえながら、近ちかづいていきました。

「おい、さっき小林こばやしからうけとった、ダイヤモンドを、おれにわたせ。おれはニコラ博士はかせだ。いうことをきかなければ、きみの命いのちがないぞ。」

地ちの底そこからひびいてくるような、いやな声こえです。二に梃ちょうのピストルをつきつけられては、命令めいれいにしたがうほかはありません。園田そのださんは、ポケットから「青あおい炎ほのお」をとりだして、博士はかせの前まえに、さしだしました。博士はかせはそれをうけとって、

「よし、よし、これでおれも、約束やくそくをはたしたわけだね。ワハハハハハ、じゃあ、あばよ。」

といいすてて、また森もりの中なかへはいっていきました。

少年しょうねんたちは、まだ森もりの中なかにいましたが、だれもこの怪人かいじんにてむかうものはありません。

やがて、さっき小林こばやし君くんの上うえから、とびおりた、大おおきなヒノキのそばへくると、二に梃ちょうのピストルを、両方りょうほうのポケットにいれ、いきなり、そのみきにすがりついて、木きのぼりをはじめました。まるでサルのように、木きのぼりがうまいのです。たちまち、枝えだや葉はのしげった中なかに、姿すがたが見みえなくなってしまいました。

小林こばやし少年しょうねんは、べつの木きのみきにかくれて、そっとそのようすを見みていました。懐中かいちゅう電灯でんとうはつけなくても、やみに目めがなれて、ぼんやりと、そのへんが見みえるのです。

小林こばやし君くんは、いまに木きの上うえで、どんなことがおこるかを、あらかたさっしていましたので、それをたのしみにして、まちかまえているのです。

ここで、お話はなしは、そのヒノキの上うえの枝葉えだはのしげった中なかにうつります。

ニコラ博士はかせは、二に梃ちょうのピストルをポケットにいれ、両手りょうてで木きのみきをかかえながら、第だい一いちの横枝よこえから、第だい二にの横枝よこえへと、だんだん上うえのほうへ、のぼっていきました。

そして、第だい三さんの横枝よこえにのぼりついたときです。ハッと気きがつくと、両方りょうほうのポケットが、かるくなっていました。

びっくりして、足あしでからだをささえ、両手りょうてでポケットをさぐってみますと、ピストルがありません。二に梃ちょうともなくなっているのです。

ふしぎです。おとしたはずはありません。ひょっとしたら、この木きにはサルかなんかがいて、ピストルを、よこどりしたのではないでしょうか。

「ウフフフフ、ニコラ博士はかせ、びっくりしているね。ぼくだよ、明智あけち小五郎こごろうだよ。ピストルは、ぼくがちょうだいして、下したへなげおとしてしまったのだよ。これで、きみもぼくも、武器ぶきがなくなったのだから、ごかくの戦たたかいができるというものだ。」

ああ、名めい探偵たんていはここにかくれて、ニコラ博士はかせのかえってくるのを、まっていたのです。博士はかせはスーパーマンのように、空そらをとぶためには、どうしても、この木きのてっぺんに、かえってこなければならないわけがあったのです。明智あけち探偵たんていは、そのことを、ちゃんと知しっていました。

明智あけちは、さらに、ことばをつづけます。

「ぼくがどうしてこんなところにいるか、そのわけは、きみももう、さっしているだろうね。

いうまでもなく、きみの空そらとぶ羽根はねを、こわしてしまうためさ。きみがどうして、スーパーマンのように、空そらをとぶか、その秘密ひみつを、ぼくは知しっているのだ。数すう年ねん前まえ、あるフランス人にんが、人間にんげんが背中せなかにつけてとべる、ヘリコプターを小ちいさくしたような機械きかいを発明はつめいした。日本にっぽんにたったひとり、その機械きかいを買かいいれたやつがいる。きみはそれを使つかってスーパーマンのまねをしていたのだ。夜よるや、うすぐらい日ひには、プロペラが見みえないので、いかにもスーパーマンがとんでいるように思おもうのだ。

きみは、その機械きかいを、この木きのてっぺんにかくしておいて、ダイヤモンドをうばうために、おりていったが、それが手てにはいったので、またプロペラを背中せなかにつけて、空そらへとびたつために、ここにもどってきた。だが、もうだめだよ。あの機械きかいは、きみが下したにおりているうちに、ぼくがこわしてしまった。きみはもうとべないのだ。スーパーマンが飛行ひこうの術じゅつをうしなってしまったのだ。」

そのとき、パッと、二ふたつのまるい光ひかりがいれちがって、まっくらな木この葉はの中なかに、二ふたつの人間にんげんの顔かおが、明あかるくてらしだされました。

明智あけち探偵たんていと、ニコラ博士はかせとが、それぞれ懐中かいちゅう電灯でんとうをとりだして、あいての顔かおをてらしたのです。

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