← Library‹ 鉄人Q ポケット小僧の冒険

ポケット小僧こぞうは、川かわの岸きしに身みをかくして、じっとそれを見みていましたが、あいにく、川かわの底そこへ、もぐられてしまっては、どうすることもできません。

しばらく待まっていても、鉄人てつじんQの姿すがたが、水面すいめんに現あらわれてくるようすはありません。いったい、どこへ行いってしまったのでしょう。

ポケット小僧こぞうは、腕組うでぐみをして、しばらく考かんがえていましたが、ふと気きがついたのは、鉄人てつじんは、川かわの底そこから、この岸きしにならんでいる、どこかの家いえへはいっていったのではないかということでした。

その家いえの地下ちか室しつが、川かわの中なかに通つうじていて、そこからもぐりこんで、階段かいだんをあがれば、一いち階かいの部屋へやへ、出でられるのではないかと、いうことでした。

ポケット小僧こぞうは、川かわっぷちに立たっている家いえを、一いち軒けんずつ、のぞきながら、歩あるいていました。

すると、さっきQが、川かわへおりていった石段いしだんから、三さん軒けん目めに、みょうな家いえがありました。門もんのついた、三さん階かいだての、古ふるい西洋せいよう館かんで、見みるからに、あやしげな建物たてものです。

門もんの鉄てつの戸とを押おしてみると、スーッとあきましたので、ポケット小僧こぞうは、そっと中なかへしのびこみました。

川かわっぷちのことですから、庭にわというほどのものはありません。門もんをはいると、すぐに西洋せいよう館かんの入口いりぐちになっています。ドアを押おしてみましたが、かぎがかかっていて開ひらきません。

そこで、西洋せいよう館かんの横手よこての方ほうにまわってみました。一いち階かいの窓まどが、ひとつだけ、明あかるくなっています。だれかその部屋へやに、いるのでしょう。

ポケット小僧こぞうは、その明あかるい窓まどに近ちかづいて、そっと、中なかをのぞいてみました。窓まどの中なかに、カーテンがさがっていますが、すきまがあるので、部屋へやのようすが、よく見みえるのです。

へんなおじいさんが、長ながいすに腰こしかけて、たばこをすっています。大おおきなめがねをかけ、白しろい口くちひげと、あごひげをはやし、灰色はいいろの背広せびろをきているのです。

「この人ひとは、もしかしたら、鉄人てつじんQを作つくったおじいさんじゃないかしら?」

ポケット小僧こぞうは、ふっと、そんなことを考かんがえました。あのおじいさんは、鉄人てつじんQが、悪わるいことをしだしてから、どこかへ姿すがたを、かくしてしまいましたが、あれから、ここのうちに、かくれていたのでは、ないでしょうか。

もし、これが、あのおじいさんならば、鉄人てつじんQは、川かわの底そこから、この西洋せいよう館かんへ、帰かえってくるのにちがいありません。

そこまで、考かんがえると、ポケット小僧こぞうは、胸むねが、ドキドキしてきました。

窓まどわくに、しがみつくようにして、しんぼうづよく、のぞいていますと、やがて、その部屋へやの向むこうがわのドアが、スーッと細目さいもくにひらき、外そとから、だれかの顔かおがのぞきました。

あっ、鉄人てつじんQです。

あの、のっぺりした白しろい顔かお、赤あかいくちびる、大おおきな目め。

ドアが、いっぱいに開ひらいて、そいつが部屋へやの中なかへはいってきました。ロボットのような歩あるき方かた、鉄人てつじんQが、川かわの底そこから、いま、あがってきたのです。洋服ようふくはべっとり、水みずにぬれています。

おじいさんのそばによって、なにか話はなしています。窓まどは、ガラス戸とがしまっているので、声こえは聞ききとれませんが、きっと宝石ほうせきをぬすんで、川かわの底そこから、はいってきたといっているのでしょう。

鉄人てつじんQが、ポケットから、キラキラ光ひかる宝石ほうせきを、いくつもとりだして、テーブルの上うえにおきました。

おじいさんが、にこにこ笑わらって、それを見みています。

このようすでは、おじいさんも、仲間なかまなのです。

鉄人てつじんQに、いろいろなものをぬすませて、よろこんでいるのです。

ポケット小僧こぞうは、このことを、少年しょうねん探偵たんてい団だん長ちょうの、小林こばやし少年しょうねんに知しらせようと思おもいました。

それで、窓まどわくから手てをはなして、外そとへ出でようと、くるっと、うしろをふりむきますと、あっ! そこのやみの中なかに、大おおきな人間にんげんの姿すがたが、ヌーッと立たちはだかっていました。

ポケット小僧こぞうは、あっ! といって、逃にげだそうとしましたが、そのとき、男おとこの両手りょうてが、ぐっとのびて、たちまちつかまえられ、こわきにかかえられてしまいました。

男おとこの大おおきな手てが、口くちをおさえているので、叫さけぶことができません。ただ手足てあしを、バタバタやるばかりです。

ポケット小僧こぞうは、部屋へやの中なかに気きをとられて、うしろから、そんな男おとこが、近ちかづいてきたことを、少すこしも知しらなかったのです。この男おとこは、鉄人てつじんQやあやしいおじいさんの仲間なかまのやつに、ちがいありません。

男おとこは、ポケット小僧こぞうを、こわきにかかえたまま、ドアをあけて、家いえの中なかにはいり、うすぐらい廊下ろうかを通とおり、そこにある階段かいだんを、コトンコトンと、のぼっていきます。

そして、二に階かいから三さん階かいへとのぼりましたが、まだ、とまりません。急きゅうな、細ほそいはしごを、四よん階かいへとのぼるのです。

その家いえは、三さん階かいだての西洋せいよう館かんですから、四よん階かいなどないはずですが、あとで考かんがえると、そこは、屋根裏やねうら部屋へやだったのです。

男おとこは、ポケット小僧こぞうをそのせまい屋根裏やねうら部屋へやにおろすと、どこからか、なわを出だして、小僧こぞうの手足てあしをしばり、口くちにはハンカチのようなもので、さるぐつわをはめてしまいました。

「ウフフフ……、おまえは少年しょうねん探偵たんてい団だんのチンピラだろう。鉄人てつじんQは、おまえが、あとをつけてきたことを、ちゃんと知しっていたんだ。それで、このうちに気きがついて、はいってくるだろうから、つかまえてくれと、頼たのまれたんだよ。おれは、あのじいさんの仲間なかまのものだ。じゃあ、今夜こんやは、ここでねるがいい。あすの朝あさになったら、飯めしは、食くわせてやるからな。」

男おとこは、そういったまま、ドアをしめ、外そとからかぎをかけて、どこかへ立たち去さってしまいました。

ポケット小僧こぞうは「アリの町まち」で、くず拾ひろいをやっている、チンピラ隊たいのひとりですから、板いたの間まにねることなんかへいきです。

「つかまってしまったら、じたばたしたって、しかたがない。今晩こんばんは、ゆっくり眠ねむって、夜よるがあけてから、よく考かんがえるんだ。」

そう思おもって目めをつむると、やがてぐっすりと眠ねむりこんでしまいました。からだは小ちいさいけれど、大胆不敵だいたんふてきな少年しょうねんです。

どのくらい眠ねむったかわかりませんが、だれかに、からだをさわられたような気きがして、ふと目めをさましました。

あたりは、まっくらです。まだ夜中よなかなのでしょう。小ちいさな窓まどがあって、外そとのあかりが、うっすらとさしこんでいます。じっと目めをあけていると、あたりが、深ふかい水みずの底そこのように、ぼんやりと見みえてきます。

カタカタカタ……かすかな物音ものおと。なんだか、床板ゆかいたの上うえを走はしっているのです。むろん人間にんげんではありません。小ちいさなやつです。

「あっ、ネズミだ。さっき、だれかにさわられたように思おもったのは、ネズミが、からだの上うえを歩あるいたのにちがいない。」

ポケット小僧こぞうは、やっと、そこに気きがつきました。古ふるい西洋せいよう館かんですから、屋根裏やねうらに、ネズミが巣すをつくっていても、ふしぎはありません。

ネズミとわかると、すっかり安心あんしんして、また、グウグウねこんでしまいました。

このネズミのおかげで、ポケット小僧こぞうは、あとで、ここから逃にげだすことが、できるのですが、その晩ばんは、まだそこまでは、考かんがえていませんでした。

つぎに目めをさましたときは、もう朝あさでした。

ポケット小僧こぞうは、よく、眠ねむったので、すっかり、元気げんきになっていました。床ゆかにころがったまま、どうして逃にげだそうかと考かんがえていますと、ドアが開ひらいて、ゆうべの男おとこが、朝御飯あさごはんを持もってきてくれました。

男おとこは、そのぼんを、床ゆかにおいて、ポケット小僧こぞうのさるぐつわをとり、手足てあしのなわをといてくれました。

「さあ、洗面せんめん所しょへ、連つれていってやる。それから朝飯あさめしだよ。」

男おとこは、そういって、ニヤニヤ笑わらいました。

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