← Library‹ ふしぎな人 10 ポケット小ぞう

かいじん二十にじゅうめんそうが、たけしくんときみ子こちゃんのおとうさんのほうせきをねらっているというので、たけしくんの家いえでは、いつも、げんじゅうな見みはりがついていました。

木村きむらさんの書生しょせいがふたり、うんてん手しゅの栗田くりた、それから、明智あけちたんていのぶかの男おとこがふたり、ぜんぶで五ご人にんが、こうたいで、家いえの外そとと中なかを見回みまわっているのでした。

木村きむらさんは、一いち間けんにとじこもったきり、なにか考かんがえ事ごとをしています。おとうさんの、そんな様子ようすを、たけしくんは、ふしぎに思おもいました。

いつものおとうさんと、まるでちがっているのです。

ゆうべ、夜よるおそく、手てあらいに行いったとき、ろうかで、おとうさんに出会であいましたが、おとうさんは、ものもいわないで、おそろしい目めで、たけしくんをにらみつけました。

おとうさんのそんなおそろしい目めを見みたのははじめてなので、たけしくんは、すっかりおびえてしまいました。

そのほかにも、まだ、いろいろあやしいことがあったのです。

たけしくんは、そのあくる日ひの夕方ゆうがた、ひとりで、門もんの外そとに立たっていました。おとうさんの様子ようすを考かんがえると、じっとしていられないような気持きもちになったからです。

門もんの前まえに立たって、だんだん暗くらくなっていく夕ゆうぐれの町まちを、ぼんやりとながめていると、向むこうの町まちかどに、ひょいと人ひとのすがたがあらわれました。中学ちゅうがくの二に年ねんか三さん年ねんぐらいの少年しょうねんです。

その少年しょうねんが、こちらを見みて、手てまねきしているのです。

「ぼくですか……」

たけしくんは、思おもわず、大おおきな声こえで聞きき返かえしました。

すると、少年しょうねんは、しっ、というように、口くちの前まえに指ゆびを立たてて、そっと、こちらへ近ちかよってきます。にこにこした、上品じょうひんな少年しょうねんです。たけしくんも、思おもわず、その方ほうへ歩あるいていきました。

「あっ、小林こばやしさん……」

たけしくんは、なつかしそうに、少年しょうねんのそばにかけよりました。

それは、名めいたんてい明智あけち小五郎こごろうの助手じょしゅの小林こばやしくんだったのです。ヘリコプターの中なかにかくれていて、たけしくんたちを助たすけてくれた、あの小林こばやしくんだったのです。

「きみが、どうしているかと思おもって、様子ようすを見みに来きたんだよ。べつに、かわったことはないかい」

そこで、たけしくんは、おとうさんが明智あけちたんていじむ所しょへ出でかけていったこと、帰かえってきてから、まるで人ひとがかわったように、ものをいわなくなったこと、一いち間けんにとじこもって、こわい顔かおをしていることなどを、小林こばやしくんに話はなしました。

小林こばやしくんは、これを聞きくと、じっと考かんがえていましたが、やがて、

「これには、なにか、わけがあるらしいね。よしっ、ぼくは、すぐにじむ所ところへ帰かえって、明智あけち先生せんせいにそうだんする。そして、きみたちをまもってあげる。ちっとも心配しんぱいすることはないよ」

といって、たけしくんのかたをたたくと、そのまま、夕ゆうやみの中なかへかけだしていってしまいました。

それから、一いち時間じかんほどたったころです。あたりは、もう、すっかり暗くらくなっていましたが、木村きむらさんの家いえのへいの外そとを、黒くろいものが、ちょろちょろと動うごいていました。

暗くらくてよくわかりませんが、なんだか、六むいつか七ななつぐらいの小ちいさな子こどものようでした。その子こどものすがたが、まだ開ひらいたままの木村きむらさんの門もんの中なかへ、すうっと、すべりこむようにはいっていきました。

その子こどもは、いったい、なに者ものだったのでしょう。むろん、小林こばやしくんではありません。もっと、ずっと小ちいさい子こどもです。

あっ、そうです。少年しょうねんたんていだんの、ちんぴらたいのポケット小こぞうにちがいありません。

ポケット小こぞうというのは、ポケットにはいるほど小ちいさいというので、こんなあだ名なをつけられたのですが、からだは小ちいさいけれども、じつにすばしっこい、りこうな少年しょうねんです。

そのポケット小こぞうが、木村きむらさんの家いえへしのびこんだのです。

かれは、いったい、なにをするつもりなのでしょうか。

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