かいじん二十めんそうが、たけしくんときみ子ちゃんのおとうさんのほうせきをねらっているというので、たけしくんの家では、いつも、げんじゅうな見はりがついていました。
木村さんの書生がふたり、うんてん手の栗田、それから、明智たんていのぶかの男がふたり、ぜんぶで五人が、こうたいで、家の外と中を見回っているのでした。
木村さんは、一間にとじこもったきり、なにか考え事をしています。おとうさんの、そんな様子を、たけしくんは、ふしぎに思いました。
いつものおとうさんと、まるでちがっているのです。
ゆうべ、夜おそく、手あらいに行ったとき、ろうかで、おとうさんに出会いましたが、おとうさんは、ものもいわないで、おそろしい目で、たけしくんをにらみつけました。
おとうさんのそんなおそろしい目を見たのははじめてなので、たけしくんは、すっかりおびえてしまいました。
そのほかにも、まだ、いろいろあやしいことがあったのです。
たけしくんは、そのあくる日の夕方、ひとりで、門の外に立っていました。おとうさんの様子を考えると、じっとしていられないような気持になったからです。
門の前に立って、だんだん暗くなっていく夕ぐれの町を、ぼんやりとながめていると、向こうの町かどに、ひょいと人のすがたがあらわれました。中学の二年か三年ぐらいの少年です。
その少年が、こちらを見て、手まねきしているのです。
「ぼくですか……」
たけしくんは、思わず、大きな声で聞き返しました。
すると、少年は、しっ、というように、口の前に指を立てて、そっと、こちらへ近よってきます。にこにこした、上品な少年です。たけしくんも、思わず、その方へ歩いていきました。
「あっ、小林さん……」
たけしくんは、なつかしそうに、少年のそばにかけよりました。
それは、名たんてい明智小五郎の助手の小林くんだったのです。ヘリコプターの中にかくれていて、たけしくんたちを助けてくれた、あの小林くんだったのです。
「きみが、どうしているかと思って、様子を見に来たんだよ。べつに、かわったことはないかい」
そこで、たけしくんは、おとうさんが明智たんていじむ所へ出かけていったこと、帰ってきてから、まるで人がかわったように、ものをいわなくなったこと、一間にとじこもって、こわい顔をしていることなどを、小林くんに話しました。
小林くんは、これを聞くと、じっと考えていましたが、やがて、
「これには、なにか、わけがあるらしいね。よしっ、ぼくは、すぐにじむ所へ帰って、明智先生にそうだんする。そして、きみたちをまもってあげる。ちっとも心配することはないよ」
といって、たけしくんのかたをたたくと、そのまま、夕やみの中へかけだしていってしまいました。
それから、一時間ほどたったころです。あたりは、もう、すっかり暗くなっていましたが、木村さんの家のへいの外を、黒いものが、ちょろちょろと動いていました。
暗くてよくわかりませんが、なんだか、六つか七つぐらいの小さな子どものようでした。その子どものすがたが、まだ開いたままの木村さんの門の中へ、すうっと、すべりこむようにはいっていきました。
その子どもは、いったい、なに者だったのでしょう。むろん、小林くんではありません。もっと、ずっと小さい子どもです。
あっ、そうです。少年たんていだんの、ちんぴらたいのポケット小ぞうにちがいありません。
ポケット小ぞうというのは、ポケットにはいるほど小さいというので、こんなあだ名をつけられたのですが、からだは小さいけれども、じつにすばしっこい、りこうな少年です。
そのポケット小ぞうが、木村さんの家へしのびこんだのです。
かれは、いったい、なにをするつもりなのでしょうか。