たけしくんと、きみ子ちゃんのおとうさんの木村さんは、金庫の中から、ほうせきばこを取り出して開いてみますと、中は、からっぽになっていました。
二十めんそうが、いつの間にか、ぬすみ出してしまったのです。
木村さんのほかに、明智たんていのぶかや、書生や、うんてん手など、五人の人が、そのへやの中で、目をさらのようにして見はっていたのです。その目の前で、ほうせきが、ほうせきばこの中からきえうせてしまったのです。いったい、二十めんそうは、どんなまほうを使ったのでしょうか。
木村さんをはじめ、みんなは、あまりのふしぎさにぼんやりしてしまって、金庫の前につっ立っていました。
すると、そのときです。大きな金庫の後ろから、ぴょんと、まっ黒なものがとび出してきました。小さなお化けです。まっ黒なシャツとズボンをつけ、頭は、黒ふくめんでつつんで、目と口のところだけ、あながあいています。頭のてっぺんから足のつま先まで、まっ黒な子どもみたいなやつです。
その小さなお化けが、ぴょん、ぴょんと、木村さんにとびかかってきました。そして、すばやく、木村さんのうちポケットに手を入れたかと思うと、中から、ぴかぴか光るものをつかみ出して、ぱっと、向こうへとびのいてしまいました。
「ほうせきは取りもどしたから、安心しな。さあ、こいつをつかまえるんだよ。こいつは、ほんとうの木村さんじゃない。二十めんそうが化けているんだよ。早く、こいつを……」
黒いお化けが、子どもの声でさけびました。
しかし、みんなは、そんなお化けのいうことはしんようできないので、ためらっていますと、木村さんが、いきなり、かけだして、へやの外へ出ていってしまいました。
「あっ、にげた。早く追っかけるんだ」
小さなお化けが、またさけびました。
みんなは、木村さんがにげだしたのを見ると、お化けのいうことがほんとうだ、と思いました。それに、木村さんのうちポケットから、ほうせきが出てきたのが、なによりのしょうこです。みんなは、二十めんそうが、どんなものにでも化けられる、へんそうの名人だったことを思い出したのです。
みんなは、へやの外へかけ出しました。そして、表門やうら門の外までしらべましたが、木村さんにへんそうした二十めんそうのすがたは、どこにも見えません。
「へんだなあ。そんなに早くにげられるはずがない。どこか、家の中にかくれているんじゃないかな」
明智たんていのぶかが、小首をかしげて、いいました。
「そうだ、家の中にかくれているんだ。門の外の町はずっと見通しなのに、どこにもいないんだから、外へにげたとは考えられない。きっと家の中だよ」
「それにしても、あの黒いお化けは、いったいなにものだろう」
「うん、そうだ。あいつのほうせきを取り返さなけりゃあ」
そこで、黒いお化けをつかまえて、しらべてみますと、
「おれ、ちんぴらたいのポケット小ぞうだよ。小林さんのめいれいで、こんな黒いシャツを着て、金庫の後ろにかくれていたんだ。おいらみたいな、小ちゃい子どもでなけりゃ、はいれはしないよ。だから、二十めんそうもゆだんしていたんだよ。さあ、これ、返すよ」
といって、さっき、二十めんそうから取りもどしたほうせきを、明智たんていのぶかに手わたすのでした。
「それにしても、あいつ、いつの間にほうせきを取り出したのかなあ。ぼくたちは、ちゃんと見はっていたんだが……」
「あいつは、手品使いだよ。ほら、一度、金庫をあけて、ほうせきばこの中にほうせきのはいっているのを、たしかめただろう。あのときだよ。金庫の前にしゃがんで、ほうせきばこをもどすときに、すばやくほうせきだけをぬき取って、うちポケットに入れてしまったのさ」
黒いお化けのポケット小ぞうがせつめいしました。