← Library‹ ふしぎな人 11 黒いおばけ

たけしくんと、きみ子こちゃんのおとうさんの木村きむらさんは、金庫きんこの中なかから、ほうせきばこを取とり出だして開ひらいてみますと、中なかは、からっぽになっていました。

二十にじゅうめんそうが、いつの間あいだにか、ぬすみ出だしてしまったのです。

木村きむらさんのほかに、明智あけちたんていのぶかや、書生しょせいや、うんてん手しゅなど、五ご人にんの人ひとが、そのへやの中なかで、目めをさらのようにして見みはっていたのです。その目めの前まえで、ほうせきが、ほうせきばこの中なかからきえうせてしまったのです。いったい、二十にじゅうめんそうは、どんなまほうを使つかったのでしょうか。

木村きむらさんをはじめ、みんなは、あまりのふしぎさにぼんやりしてしまって、金庫きんこの前まえにつっ立たっていました。

すると、そのときです。大おおきな金庫きんこの後うしろから、ぴょんと、まっ黒くろなものがとび出だしてきました。小ちいさなお化ばけです。まっ黒くろなシャツとズボンをつけ、頭あたまは、黒くろふくめんでつつんで、目めと口くちのところだけ、あながあいています。頭あたまのてっぺんから足あしのつま先さきまで、まっ黒くろな子こどもみたいなやつです。

その小ちいさなお化ばけが、ぴょん、ぴょんと、木村きむらさんにとびかかってきました。そして、すばやく、木村きむらさんのうちポケットに手てを入いれたかと思おもうと、中なかから、ぴかぴか光ひかるものをつかみ出だして、ぱっと、向むこうへとびのいてしまいました。

「ほうせきは取とりもどしたから、安心あんしんしな。さあ、こいつをつかまえるんだよ。こいつは、ほんとうの木村きむらさんじゃない。二十にじゅうめんそうが化ばけているんだよ。早はやく、こいつを……」

黒くろいお化ばけが、子こどもの声こえでさけびました。

しかし、みんなは、そんなお化ばけのいうことはしんようできないので、ためらっていますと、木村きむらさんが、いきなり、かけだして、へやの外そとへ出でていってしまいました。

「あっ、にげた。早はやく追おっかけるんだ」

小ちいさなお化ばけが、またさけびました。

みんなは、木村きむらさんがにげだしたのを見みると、お化ばけのいうことがほんとうだ、と思おもいました。それに、木村きむらさんのうちポケットから、ほうせきが出でてきたのが、なによりのしょうこです。みんなは、二十にじゅうめんそうが、どんなものにでも化ばけられる、へんそうの名人めいじんだったことを思おもい出だしたのです。

みんなは、へやの外そとへかけ出だしました。そして、表門おもてもんやうら門もんの外そとまでしらべましたが、木村きむらさんにへんそうした二十にじゅうめんそうのすがたは、どこにも見みえません。

「へんだなあ。そんなに早はやくにげられるはずがない。どこか、家いえの中なかにかくれているんじゃないかな」

明智あけちたんていのぶかが、小首こくびをかしげて、いいました。

「そうだ、家いえの中なかにかくれているんだ。門もんの外そとの町まちはずっと見通みとおしなのに、どこにもいないんだから、外そとへにげたとは考かんがえられない。きっと家いえの中なかだよ」

「それにしても、あの黒くろいお化ばけは、いったいなにものだろう」

「うん、そうだ。あいつのほうせきを取とり返かえさなけりゃあ」

そこで、黒くろいお化ばけをつかまえて、しらべてみますと、

「おれ、ちんぴらたいのポケット小こぞうだよ。小林こばやしさんのめいれいで、こんな黒くろいシャツを着きて、金庫きんこの後うしろにかくれていたんだ。おいらみたいな、小ちいちゃい子こどもでなけりゃ、はいれはしないよ。だから、二十にじゅうめんそうもゆだんしていたんだよ。さあ、これ、返かえすよ」

といって、さっき、二十にじゅうめんそうから取とりもどしたほうせきを、明智あけちたんていのぶかに手てわたすのでした。

「それにしても、あいつ、いつの間あいだにほうせきを取とり出だしたのかなあ。ぼくたちは、ちゃんと見みはっていたんだが……」

「あいつは、手品てじな使つかいだよ。ほら、一いち度ど、金庫きんこをあけて、ほうせきばこの中なかにほうせきのはいっているのを、たしかめただろう。あのときだよ。金庫きんこの前まえにしゃがんで、ほうせきばこをもどすときに、すばやくほうせきだけをぬき取とって、うちポケットに入いれてしまったのさ」

黒くろいお化ばけのポケット小こぞうがせつめいしました。

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