← Library‹ ふしぎな人 11 金色のとら

それから、家いえじゅうのそうさくが始はじまりました。

明智あけちたんていのぶかがふたり、書生しょせいがふたり、自動じどう車しゃのうんてん手しゅ、それに、黒くろふくめんのままのポケット小こぞうもくわわって、六ろく人にんが二に組くみに分わかれて、ろうかからろうかへ、へやからへやへと、さがし回まわるのでした。

しかし、木村きむらさんに化ばけた二十にじゅうめんそうは、どこにもいません。もう、さがすところがないのです。

「あっ、このおし入いれ、まだあけてみなかったね」

ポケット小こぞうが、ろうかのおし入いれの前まえに立たち止どまって、そっとささやきました。

「うん、まだだ。あけてみよう」

明智あけちたんていのぶかが、おし入いれの戸とに手てをかけて、そっと開ひらきましたが、開ひらいたかと思おもうと、

「わあっ……」

とさけんで、あとじさりをしました。

おお、ごらんなさい。一いち頭とうの大おおきなとらが、ぬうっと、あらわれてきたではありませんか。

黄色きいろいからだに、太ふとい、まっ黒くろなしまがついています。その黄色きいろいところが、金色きんいろに光ひかっているのです。らんらんとかがやく二ふたつの目めが、じっと、こちらをにらんでいます。

家いえの中なかに、とらがいるなんて、なんという、ふしぎなことでしょう。まるで、考かんがえてもみなかったことです。

みんなは、あまりのおそろしさに、立たちすくんだまま、どうすることもできないのでした。

金色きんいろのとらは、ゆうゆうと、おし入いれの中なかから出でてきて、のそりのそりと歩あるきだしました。

そして、みんなのそばを通とおりすぎると、にわかに足あしを早はやめ、いきなりかけだして、ろうかの向むこうへまがっていってしまいました。

ここは、たけしくんと、きみ子こちゃんのしんしつ(ねるへや)です。

さっき、書生しょせいさんが来きて、二十にじゅうめんそうが、家いえの中なかにかくれているといったので、ふたりは、こわくてしかたがありません。ベッドから出でて、パジャマを着きたまま、へやのすみっこで、たがいのからだをだきしめて、ぶるぶるふるえながら、立たっていました。

すると、入口いりぐちのドアが音おともなく、すうっと開ひらいたのです。そして、そのすき間まから、金色きんいろに光ひかるものがあらわれてきたではありませんか。

とらです。びっくりするほど大おおきな、金色きんいろのとらです。

ふたりは、あまりのふしぎさに、ゆめでも見みているのではないかと思おもいました。しかし、ゆめではありません。生いきたとらが、ほんとうに、しんしつの中なかへはいってきたのです。

大おおとらは、へやにはいると、あと足あしで立たって、前足まえあしで、かぎあなにさしたままになっているかぎを、カチンとかけてしまいました。

ふたりは、もう、にげ出だすこともできないのです。

金色きんいろのとらは、ふたりの方ほうへ、のそりのそりと近ちかづいてきました。

さて、みなさん、これから、いったい、どんなことが起おこるのでしょう。たけしくんときみ子こちゃんは、この大おおとらに食くわれてしまうのではないでしょうか。

それにしても、家いえの中なかにとらがいたなんて、じつにふしぎです。これには、なにかわけがあるのにちがいありません。そのわけとは……。

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