← Library‹ ふしぎな人 12 わらうとら

ふたりは、それを見みると、きゃあっといって、だきあったまま、たおれるようにしゃがんでしまいました。

「うふふふ……」

そのとき、へんなわらい声ごえが聞きこえてきました。へやの中なかからです。へやの中なかには、とらのほかに、だれもいません。では、とらがわらったのでしょうか。

ああ、わらうとら。お化ばけのようにわらうとら。

たけしくんときみ子こちゃんは、ぞうっとして、気きが遠とおくなるような思おもいでした。

「うふふふ……。たけしときみ子こ、しばらくだったなあ。おれがだれだか、わかるかね」

ふたりは、そのきみの悪わるい声こえに、聞ききおぼえがありました。二十にじゅうめんそうです。あいつの声こえです。

「おれは、へんそうの名人めいじんだ。人間にんげんばかりでなく、どんなものにも化ばけられるんだ。もうじゅうにだって、化ばけられるんだよ」

まるで、人間にんげんのように、あと足あしで立たちあがったとらが、ふたりのかくれているかべの間あいだをのぞきこみました。

「うふふふ……。こわがらなくてもよい。おまえたちにかみつくわけじゃない。

ざんねんながら、おれはしっぱいしたんだ。ポケット小こぞうに、ほうせきを取とり返かえされてしまった。そして、追おっかけられたのだ。そういうときの用意よういに、おれは、とらの皮かわを、おし入いれの中なかにかくしておいたんだ。それを着きて、みんなをびっくりさせて、そのまに、にげだしたのだ。おれは、けっしてつかまりはしないよ。

ところで、きみたちにいっておくが、おれは、きみたちのおとうさんに化ばけて、ほうせきをぬすんだ。だから、ここのうちには、きみたちの、ほんとうのおとうさんはいないのだ。

どこにいると思おもうね。うふふ……。ある場所ばしょにかくしてある。そして、おとうさんと引ひきかえに、ほうせきをもらうつもりだよ。

わかったかね。おとうさんを返かえしてほしかったら、ほうせきをおれにわたすように、みんなにたのむのだ。ほうせきを、いつ、どこへ持もってくればいいかは、あとで知しらせるよ。わかったね。じゃあ、あばよ」

とらは、それだけのことをいってしまうと、あと足あしで、まどのところへ歩あるいていき、ガラス戸とを開ひらいて、まっ暗くらなにわへ、ぴょいととび出だしていってしまいました。

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