← Library‹ ふしぎな人 13 マンホール

二十にじゅうめんそうは、大おおきなとらにへんそうして、木村きむらさんの家いえのそばにある、こうしゅう電話でんわの中なかににげこみました。みんなが、そのまわりを取とりまいていると、ドアが開ひらいて、中なかから、ひとりのろうじんが出でてきました。そして、さっきとびこんだとらは、かげも形かたちも見みえません。どこかへきえうせてしまったのです。

みんなは、あっけにとられて、そのろうじんを見送みおくっていましたが、ポケット小こぞうは、明智あけちたんていのぶかに、なにかささやくと、そのまま、ろうじんのあとをつけていきました。ポケット小こぞうは、ポケットの中なかにはいるほど小ちいさいといわれている少年しょうねんですから、あとをつけるには、つごうがいいのです。

ろうじんは、大おおきな黒くろいふろしきづつみを小こわきにかかえて、すたすたと歩あるいていきます。その歩あるき方かたが、とても早はやくて、すこしも年としよりらしい様子ようすがありません。

ポケット小こぞうは、気きづかれないように、ちょこちょこと、すばやくあとをつけました。

「ははん、わかったぞ。あのふろしきの中なかに、とらの皮かわが、まるめてつつんであるんだな。こうしゅう電話でんわのはこの中なかで、それをぬいで、ろうじんのすがたになってあらわれたんだ。あいつは、さっき、木村きむらさんのおし入いれの中なかにかくれたとき、そこに用意よういしておいたふくや白しろいつけひげで、ろうじんにへんそうしたんだ。それから、とらの皮かわをかぶったんだ。だから、とらの皮かわさえぬげば、すぐにろうじんに化ばけられたんだ。一いち分間ふんかんもかかりゃしない。二十にじゅうめんそうのやつ、うまいことを考かんがえたもんだな」

ポケット小こぞうは、そんなことをぶつぶつつぶやきながら、なおもゆだんなく、ろうじんのあとをつけていきました。

ろうじんは、さびしい方ほうへ歩あるいていきます。夜よふけのことですから、あたりは、まっ暗くらです。

すると、ろうじんが、立たち止どまって、道みちにしゃがむのが、かすかに見みえました。

「おやっ」

と思おもって、目めをこらしていますと、ろうじんは、大おおきなまるいものを、地面じめんからひき起おこしているではありませんか。

「あっ、わかった。マンホールの鉄てつのふたをずらしているんだな」

そうです。ろうじんは、マンホールのふたを開ひらいて、その中なかへおりていこうとしているのです。

「あの中なかへかくれるつもりなのかな。だが、おれがつけていることは気きがつかないんだから、なにも、かくれることはない。すると、……あっ、そうかもしれないぞっ」

ポケット小こぞうは、そこに気きがつきました。

二十にじゅうめんそうは、とんでもないことを考かんがえ出だすやつですから、マンホールとそっくりのあなをこしらえて、そこから自分じぶんの住すみかへ出入でいりしているのかもしれません。

マンホールだと思おもえば、だれもあやしまないのですから、こんなによいひみつの出入でいり口くちはありません。

ろうじんは、マンホールにはいると、中なかから、鉄てつのふたをしめてしまいました。

ポケット小こぞうは、急いそいでそこへ行いって、鉄てつのふたに手てをかけてみましたが、子こどもの力ちからで動うごかせるものではありません。

「よし、すぐ、みんなに、このことを知しらせよう。そして、明智あけち先生せんせいや小林こばやしさんと、電話でんわでそうだんするんだ」

そういって、ポケット小こぞうは、大急おおいそぎで、もと来きた方ほうへ、かけだすのでした。

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