← Library‹ ふしぎな人 13 動くよろい

ポケット小こぞうの考かんがえたとおり、そのマンホールは、二十にじゅうめんそうの住すみかの、ひみつのマンホールでした。

マンホールの中なかは、コンクリートのかべにかこまれていましたが、そのかべに、ちょっと見みたのではわからない、ひみつのドアがあって、それを開ひらくと、ずっと、よこあながつづいていて、あるせいようかんのえんの下したへ出でられるようになっていました。そこのゆか板いたが、上あげぶたになっていて、それをあけて上うえに出でると、りっぱなへやがあるのです。

ろうじんにへんそうした二十にじゅうめんそうは、そのへやへ上あがっていきました。

「うふふふふ。あぶないところだった。だが、おれは、まほう使つかいだからな。とらに化ばけ、ろうじんに化ばけ、それから、だれも知しらないマンホールの入口いりぐちだ。あいつら、おれがどこかへきえてしまったかと、おどろいているだろうて。うふふふふ……」

二十にじゅうめんそうは、そんなひとり言ごとをいいながら、広ひろいへやの中なかを、ぐるっと見回みまわしました。

それは、へんなへやでした。広ひろいせいよう風ふうのへやのかべには、いろいろな形かたちの刀かたなやてっぽうなどがならべてあり、その下したには、むかしのせいようのよろいや、日本にっぽんのよろい、中国ちゅうごくのよろいなどが、まるで、人ひとが立たっているように、ずらっとかざってありました。びじゅつ品ひんの好すきな二十にじゅうめんそうは、古ふるい刀かたなやよろいなどを、このへやにかざって、よろこんでいるのでしょう。

かれは、ドアをあけて、つぎのへやにはいりました。そこは、しんしつらしく、大おおきなベッドがおいてありました。

そこで、ろうじんのふくをぬぎ、顔かおのつけひげやかつらを取とり、せんめん台だいで顔かおをあらい、ようふくだんすからパジャマを出だして着きかえてから、よびりんをおすのでした。

すると、ドアにノックの音おとがして、ひとりのぶかがはいってきました。

「かしら、うまくいきましたか」

「いや、しっぱいした。ちんぴらにじゃまをされた。そして、みんなに追おっかけられたので、いろんなへんそうをして、うまくにげてきたのだ。だが、あのほうせきは、きっと手てに入いれてみせるよ。……ああ、くたびれた。今夜こんやは、もう、ねることにしよう」

二十にじゅうめんそうは、そういって、ぶかを下さがらせてから、そこのつくえの上うえにおいてあったウイスキーをグラスについで、ぐっとのみほすと、そのままベッドにもぐりこんでしまいました。

さて、そのよく朝あさのことです。八はち時じごろ、二十にじゅうめんそうは、目めをさましてベッドから出でると、ドアを開ひらいて、よろいのかざってあるへやにはいりました。毎朝まいあさ、そのへやを見みるのが楽たのしみなのです。

「どうだ、りっぱなものじゃないか。これだけ、世界せかいじゅうのよろいや刀かたなを集あつめているやつは、ほかにあるまい。ここまで集あつめるのには、おれも、ずいぶんくろうしたもんだからな」

二十にじゅうめんそうは、さもうれしそうに、ひとつひとつ、よろいをながめながら歩あるき回まわるのでした。

「おやっ」

二十にじゅうめんそうは、びっくりして立たち止どまりました。すぐそばに立たっている銀色ぎんいろのせいようのよろいが、かすかに動うごいたように思おもわれたからです。

ふしんに思おもった二十にじゅうめんそうが、その銀色ぎんいろのよろいを見みていると、ああ、これは、どうしたことでしょう。そのよろいが、だんだん大おおきく動うごき出だして、こちらに歩あるいてくるではありませんか。よろいのお化ばけです。

二十にじゅうめんそうは、ぽかんと口くちをあけ、あっけにとられたように立たちすくんでしまいました。

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