そのよろいは、銀色にみがいた鉄でできています。銀色のかぶとをかぶり、その下に、銀色のかめんのようなものが見えます。
その大きなよろいが、二十めんそうの方へ、しずかに歩いてくるのです。
「お、おまえは、なに者だっ。よろいの中に、はいっているのは、だれだっ」
二十めんそうは、思わず、かべぎわにあとずさりしながら、どなりつけました。よろいが歩きだすからには、中に、人間がはいっているとしか考えられないからです。
「はははは……。だれだと思うね。この声に聞きおぼえはないかね」
よろいの中から、人間の声が聞こえてきました。
「あっ、それじゃあ、おまえは……」
二十めんそうは、その声に、聞きおぼえがあったのです。かれは、はっとしたように、顔色をかえました。
「はははは、わかったかね。そのとおり、きみのてきの明智小五郎だよ」
「どうして、ここがわかったのだ」
二十めんそうは、ふしぎそうに、聞き返しました。
「きみは気づかなかったが、ポケット小ぞうが、きみのあとをつけて、マンホールの入口を発見したんだよ。ぼくは、そのマンホールから、はいってきたのさ。その道には、いくつも、かぎのかかったドアや上げぶたがあったけれども、ぼくは、ばんのうかぎを持っているので、どんなドアでも開くことができるのさ。
そして、このよろいの中へかくれていたというわけだよ」
「うむっ」
二十めんそうは、さもくやしそうにうなったかと思うと、いきなり、かべにかけてあった長いけんを取って、明智たんていに向かってきました。
しかたがないので、明智たんていのほうも、よろいのこしにつるしていた、長いけんをぬきはなって、二十めんそうのけんをふせぎました。
はげしいきり合いが始まりました。日本のけんどうではなくて、せいようのフェンシングのたたかいです。
名たんていも、二十めんそうも、フェンシングのやり方を、よく知っていました。二十めんそうのけんが、明智たんていのむねを目がけて、はげしくつき出されてくるのを、明智たんていのけんが、はっしと受け止めて、空中にきりむすぶのです。二本のけんが、目にもとまらぬはやさでとびちがうので、まるで、銀色のにじがきらめいているように見えます。
ほんとうのけんですから、さわればきれるのです。しかし、両方とも、あい手をきずつけたり、ころしたりする気はありません。ただ、フェンシングのうでまえを、見せあっているのです。
二十めんそうも、なかなか強いけれど、明智たんていは、それよりいっそう強いのでした。
チャリン、チャリンと、銀色のけんがぶつかりあい、そのするどいけん先が、ひょいひょいと、のどやむねにせまってくるのを、明智たんていは、みごとにはね返しています。二十めんそうのこきゅうが、だんだんはげしくなってきました。
そのとき、さっと、つき出した二十めんそうのけんを、明智たんていは、自分のけんで、くるくるとまき返すようにして、ぱっとはねると、二十めんそうのけんは、手からはなれて、てんじょう高く、まい上がってしまいました。