← Library‹ ふしぎな人 14 フェンシング

そのよろいは、銀色ぎんいろにみがいた鉄てつでできています。銀色ぎんいろのかぶとをかぶり、その下したに、銀色ぎんいろのかめんのようなものが見みえます。

その大おおきなよろいが、二十にじゅうめんそうの方ほうへ、しずかに歩あるいてくるのです。

「お、おまえは、なに者ものだっ。よろいの中なかに、はいっているのは、だれだっ」

二十にじゅうめんそうは、思おもわず、かべぎわにあとずさりしながら、どなりつけました。よろいが歩あるきだすからには、中なかに、人間にんげんがはいっているとしか考かんがえられないからです。

「はははは……。だれだと思おもうね。この声こえに聞ききおぼえはないかね」

よろいの中なかから、人間にんげんの声こえが聞きこえてきました。

「あっ、それじゃあ、おまえは……」

二十にじゅうめんそうは、その声こえに、聞ききおぼえがあったのです。かれは、はっとしたように、顔色かおいろをかえました。

「はははは、わかったかね。そのとおり、きみのてきの明智あけち小五郎こごろうだよ」

「どうして、ここがわかったのだ」

二十にじゅうめんそうは、ふしぎそうに、聞きき返かえしました。

「きみは気きづかなかったが、ポケット小こぞうが、きみのあとをつけて、マンホールの入口いりぐちを発見はっけんしたんだよ。ぼくは、そのマンホールから、はいってきたのさ。その道みちには、いくつも、かぎのかかったドアや上あげぶたがあったけれども、ぼくは、ばんのうかぎを持もっているので、どんなドアでも開ひらくことができるのさ。

そして、このよろいの中なかへかくれていたというわけだよ」

「うむっ」

二十にじゅうめんそうは、さもくやしそうにうなったかと思おもうと、いきなり、かべにかけてあった長ながいけんを取とって、明智あけちたんていに向むかってきました。

しかたがないので、明智あけちたんていのほうも、よろいのこしにつるしていた、長ながいけんをぬきはなって、二十にじゅうめんそうのけんをふせぎました。

はげしいきり合あいが始はじまりました。日本にっぽんのけんどうではなくて、せいようのフェンシングのたたかいです。

名めいたんていも、二十にじゅうめんそうも、フェンシングのやり方かたを、よく知しっていました。二十にじゅうめんそうのけんが、明智あけちたんていのむねを目めがけて、はげしくつき出だされてくるのを、明智あけちたんていのけんが、はっしと受うけ止とめて、空中くうちゅうにきりむすぶのです。二に本ほんのけんが、目めにもとまらぬはやさでとびちがうので、まるで、銀色ぎんいろのにじがきらめいているように見みえます。

ほんとうのけんですから、さわればきれるのです。しかし、両方りょうほうとも、あい手てをきずつけたり、ころしたりする気きはありません。ただ、フェンシングのうでまえを、見みせあっているのです。

二十にじゅうめんそうも、なかなか強つよいけれど、明智あけちたんていは、それよりいっそう強つよいのでした。

チャリン、チャリンと、銀色ぎんいろのけんがぶつかりあい、そのするどいけん先さきが、ひょいひょいと、のどやむねにせまってくるのを、明智あけちたんていは、みごとにはね返かえしています。二十にじゅうめんそうのこきゅうが、だんだんはげしくなってきました。

そのとき、さっと、つき出だした二十にじゅうめんそうのけんを、明智あけちたんていは、自分じぶんのけんで、くるくるとまき返かえすようにして、ぱっとはねると、二十にじゅうめんそうのけんは、手てからはなれて、てんじょう高たかく、まい上あがってしまいました。

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