二十めんそうが負けたのです。負けたとわかると、かれは、いきなり、まどのところへとんでいって、にげ出そうとしました。
「はははは。二十めんそうくん、だめだよ。この家のまわりは、おおぜいのけいかんが取りまいているのだ。とても、にげ出せやしないよ」
明智たんていは、けんを前につきながら、へやのまん中に立って、さもゆかいそうにわらうのでした。
二十めんそうは、まどから、にわをながめました。向こうの木の間に、けいかんが、ふたり、三人、四人と、見はっているのが見えます。
「ちくしょう、すっかり手が回ったな。明智くん、さすがにきみは、ぬかりがないねえ。だが、おれは、いつでも、さいごのおくの手が用意してあるんだ。おれは、にげ出してみせるぞ」
二十めんそうは、さけぶようにいったかと思うと、ぱっとまどにとびつくと、いきなり、空中に向かってとび上がりました。
すると、ふしぎふしぎ、二十めんそうのからだは、すうっと、空中に上がったまま、落ちてこないではありませんか。二本の足が、まどの上の方に、ぶらんぶらんと、ゆれているのです。
明智たんていは、まどにかけよって、外をのぞきました。にわの木の間にかくれていたけいかんたちも、まどの下へかけよってきました。
「あっ、屋根だっ。屋根へのぼっていくぞっ」
ひとりのけいかんが、びっくりしたようにさけびました。
ごらんなさい。高い屋根の上から、なわばしごが、まどのへんまでぶらさがっています。二十めんそうは、それにとびついたのです。そして、屋根へのぼっていくのです。
これが、かれのおくの手でした。万一のときのために、なわばしごを用意しておいたのです。
しかし、屋根にのぼって、どうしようというのでしょう。となりの家の屋根と、くっついているわけではありませんから、屋根づたいに、にげることはできません。
この家を取りまいていたけいかんたちが、おおぜい、まどの下へ集まってきました。しかし、なわばしごは、ずっと上の方にあるので、地面からとびつくことはできません。さっき、二十めんそうがしたように、まどわくに上がって、そこからとびつくほかはないのです。
明智たんていは、大急ぎで、せいようのよろいをぬぎすてると、身がるなすがたで、まどわくに上がり、空中にたれているなわばしごに、さっととびつきました。
そのときには、二十めんそうは、もう、とっくに、屋根に上がってしまって、下からは、すがたが見えません。
明智たんていは、なわばしごをのぼりきると、屋根に手をかけました。そして、ひょいと身をおどらせると、もう、屋根の上に立っていました。
急な屋根です。とても、立ったままでは歩けません。たんていは、はうようにして、てっぺんの方へのぼっていきます。
そのときです。ブルルルン、ブルルルン、ブルルルン……という、ぶきみな音が、屋根のてっぺんの方から聞こえてきました。
おお、おどろくではありませんか。かれのおくの手は、これだったのです。
かれは、空中にまい上がっていくのです。まるで、スーパーマンのように、からだをのばして、およぐように、空高くとびさっていくではありませんか。二十めんそうは、いったい、どうして、空をとぶことができるのでしょうか。二十めんそうは、ほんとうの、まほう使いなのでしょうか。