← Library‹ ふしぎな人 14 二十めんそうのおくの手

二十にじゅうめんそうが負まけたのです。負まけたとわかると、かれは、いきなり、まどのところへとんでいって、にげ出だそうとしました。

「はははは。二十にじゅうめんそうくん、だめだよ。この家いえのまわりは、おおぜいのけいかんが取とりまいているのだ。とても、にげ出だせやしないよ」

明智あけちたんていは、けんを前まえにつきながら、へやのまん中なかに立たって、さもゆかいそうにわらうのでした。

二十にじゅうめんそうは、まどから、にわをながめました。向むこうの木この間まに、けいかんが、ふたり、三さん人にん、四よん人にんと、見みはっているのが見みえます。

「ちくしょう、すっかり手てが回まわったな。明智あけちくん、さすがにきみは、ぬかりがないねえ。だが、おれは、いつでも、さいごのおくの手てが用意よういしてあるんだ。おれは、にげ出だしてみせるぞ」

二十にじゅうめんそうは、さけぶようにいったかと思おもうと、ぱっとまどにとびつくと、いきなり、空中くうちゅうに向むかってとび上あがりました。

すると、ふしぎふしぎ、二十にじゅうめんそうのからだは、すうっと、空中くうちゅうに上あがったまま、落おちてこないではありませんか。二に本ほんの足あしが、まどの上うえの方ほうに、ぶらんぶらんと、ゆれているのです。

明智あけちたんていは、まどにかけよって、外そとをのぞきました。にわの木この間まにかくれていたけいかんたちも、まどの下したへかけよってきました。

「あっ、屋根やねだっ。屋根やねへのぼっていくぞっ」

ひとりのけいかんが、びっくりしたようにさけびました。

ごらんなさい。高たかい屋根やねの上うえから、なわばしごが、まどのへんまでぶらさがっています。二十にじゅうめんそうは、それにとびついたのです。そして、屋根やねへのぼっていくのです。

これが、かれのおくの手てでした。万一まんいちのときのために、なわばしごを用意よういしておいたのです。

しかし、屋根やねにのぼって、どうしようというのでしょう。となりの家いえの屋根やねと、くっついているわけではありませんから、屋根やねづたいに、にげることはできません。

この家いえを取とりまいていたけいかんたちが、おおぜい、まどの下したへ集あつまってきました。しかし、なわばしごは、ずっと上うえの方ほうにあるので、地面じめんからとびつくことはできません。さっき、二十にじゅうめんそうがしたように、まどわくに上あがって、そこからとびつくほかはないのです。

明智あけちたんていは、大急おおいそぎで、せいようのよろいをぬぎすてると、身みがるなすがたで、まどわくに上あがり、空中くうちゅうにたれているなわばしごに、さっととびつきました。

そのときには、二十にじゅうめんそうは、もう、とっくに、屋根やねに上あがってしまって、下したからは、すがたが見みえません。

明智あけちたんていは、なわばしごをのぼりきると、屋根やねに手てをかけました。そして、ひょいと身みをおどらせると、もう、屋根やねの上うえに立たっていました。

急きゅうな屋根やねです。とても、立たったままでは歩あるけません。たんていは、はうようにして、てっぺんの方ほうへのぼっていきます。

そのときです。ブルルルン、ブルルルン、ブルルルン……という、ぶきみな音おとが、屋根やねのてっぺんの方ほうから聞きこえてきました。

おお、おどろくではありませんか。かれのおくの手ては、これだったのです。

かれは、空中くうちゅうにまい上あがっていくのです。まるで、スーパーマンのように、からだをのばして、およぐように、空そら高たかくとびさっていくではありませんか。二十にじゅうめんそうは、いったい、どうして、空そらをとぶことができるのでしょうか。二十にじゅうめんそうは、ほんとうの、まほう使つかいなのでしょうか。

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