← Library‹ ふしぎな人 2 てんにのぼるまほうつかいのまき

きむらたけしくんは、いもうとのきみ子こちゃんとふたりで、ちかくにあるふしぎなせいようかんへあそびに行いきました。

そこには、林はやしさんという、ふしぎな人ひとがすんでいました。きんじょの人ひとは、林はやしさんをまほうつかいとよんでいたのです。

でも、たけしくんのおとうさんと、その林はやしさんとは、お友ともだちなので、こわくはありません。

そのばけものやしきには、ひろいしばふのにわがあるのです。

まほうつかいの林はやしさんは、そのにわで、たけしくんときみ子こちゃんに、ふしぎなことをやってみせました。

虫むしのように小ちいさな林はやしさんがあらわれ、それがだんだん大おおきくなって、ほんとうの林はやしさんのすがたにもどったのです。

たけしくんときみ子こちゃんは、びっくりしてしまって、ものもいえないでいました。

「わははは……。おどろいたかい。これぐらいのことにおどろいてはだめだよ。

いまにもっとびっくりするようなことがおこるからね。

せけんの人ひとは、わしをまほうつかいだといっているが、それはほんとうかもしれないよ。

いいかい、こんどはどんなことがおこるか、よくみているんだよ」

くろいマントをきた林はやしさんは、そういったかとおもうと、にわの中なかで、いちばん大おおきな木きの下したへ行いって、そのふといみきを、するするとのぼりはじめたではありませんか。

くろいマントがひらひらして、大おおきな鳥とりがのぼっていくようです。

みるみるみきをのぼりきって、はのしげったえだの中なかへかくれてしまいました。

下したのえだがガサガサとうごき、その上うえのえだがうごき、また、その上うえのえだがうごき、すがたはみえませんが、林はやしさんがだんだん上うえのほうへのぼっていくのがわかります。そして、とうとうてっぺんまでたどりついたようです。

たけしくんたちはかおをそらにむけて、その大おおきな木きのてっぺんをじっとみつめていました。

しばらくすると、ブルンブルンブルンブルン……と、みょうなおとがきこえてきたではありませんか。

木きのてっぺんが大風おおふうにふかれているように、ザーッとゆれています。

そのとき、そのてっぺんから、大おおきなくろい鳥とりのようなものがそらへまいあがりました。

「あらっ、おじさんだわ。おじさんがとんでいくわ」

きみ子こちゃんが、たけしくんのかたに、すがりついてさけびました。

たけしくんは、びっくりしてしまって、ものもいえません。

大おおきなこうもりのようです。林はやしさんは、くろいマントをひらひらさせながら、たのしそうにとんでいきます。

「あっ、プロペラだ。きみ子こちゃん、あれ、プロペラだよ。

ほら、林はやしさんのせなかの上うえで、きらきらひかってまわってるだろう。ヘリコプターとおんなじだ。プロペラのちからでとんでいるんだよ」

たけしくんは、そういって、目めをまんまるにしてそらをみつめました。

林はやしさんは、あのプロペラをまわすきかいをせなかにくくりつけてとんでいるのでしょうか。そんなべんりなきかいがあるなんて、きいたこともありません。

林はやしさんはえらいはつめいかなのでしょうか。

だれもしらないふしぎなきかいをはつめいするので、まほうつかいのようにみえるのでしょうか。

「あらあら、もうあんなに小ちいさくなったわ」

「ほんとだ。もうからすぐらいの大おおきさだね。いまに、すずめぐらいになって、そして、みえなくなってしまうよ」

まっくろなふしぎな鳥とりは、たかくたかく、そらにまいあがって、たけしくんがいったとおり、すずめぐらいの大おおきさになり、それから、ちょうちょうぐらいになり、はえぐらいになり、そして、とうとうみえなくなってしまいました。

「どこへ行いったんでしょう。てんにのぼってしまって、もうかえってこないのじゃないかしら」

きみ子こちゃんは、かなしそうなかおになって、なみだぐんでいました。

「あっ、あれをごらん」

たけしくんが、きみ子こちゃんのかたをゆさぶりました。

「まあ……」

きみ子こちゃんも、そのほうをみると、あっとおどろいたまま、ものもいえなくなりました。

さっきの大おおきな木きの下したに、林はやしさんがにこにこわらってたっていたのです。

いつのまにそらからもどってきたのでしょう。ほんとうに、こんなふしぎなことってあるものでしょうか。

「あはははは……。またびっくりしたね。そうじゃないよ。ぼくは林はやしさんじゃないんだよ」

四よんかくなめがねをかけ、ぴんとはねた口くちひげと、三さんかくのあごひげをはやし、くろいマントをきた、林はやしさんとそっくりな人ひとが、林はやしさんじゃないというのです。

「よくみてごらん。ほら、ぼくはこんなに小ちいさいじゃないか。きみたちとおんなじ小しょう学校がっこうの三さんねん生せいなんだよ。でも、林はやしさんによくにてるだろう。そっくりだろう」

なるほど、よくみると、せが小ちいさいのです。こえも子こどもです。

「あははは……、まだわからないかい。これがさっきの林はやしさんのまほうのたねなんだよ。こっちへ来きてごらん。すっかりたねあかしをしてやるから」

たけしくんもきみ子こちゃんもさっきからつぎつぎとおこるふしぎに、ゆめでもみているようなきもちでした。

とてもおもしろいどうわの本ほんでもよんでいるようなきもちでした。

林はやしさんと、そっくりなしょうねんが、こっちへ来きてごらんというので、ふたりは、おずおずとそのほうへちかよっていきました。

「ほらね、これがまほうのたねだよ」

しょうねんは、そういって、木きのみきのうしろをゆびさしました。

「これが、さいしょにあらわれたにんぎょうだよ。ぜんまいじかけであるくのさ。二十にじゅうセンチぐらいしかないだろう。

それから、あっちにもう一ひとつある。やっぱりぜんまいじかけなんだよ。これは四十よんじゅうセンチぐらいあるだろう。二ふたつともあるかせてみようか」

しょうねんは、そういって、二ふたつのにんぎょうをもってきました。

「いいかい、みててごらん」

二ふたつのにんぎょうをたてて、せなかのねじをまきますと、二十にじゅうセンチと四十よんじゅうセンチの小ちいさい林はやしさんが、足あしなみをそろえて、とことことあるきだしたではありませんか。

四よんかくなめがねをひからせ、口くちひげをぴんとはねて、くろいマントをひらひらさせながら。

「こうして木きのみきにかくれるたびに、だんだん大おおきいのといれかわっていったんだよ。

そして、三さんばんめにあらわれたのが、このぼくだったのさ。

それから、ぼくがこの木きのみきにかくれると、そこにまちかまえていた林はやしさんが、すがたをあらわしたというわけだよ。わかったかい、これがまほうのたねなんだよ」

きいてみるとすっかりわけがわかりました。

「ねえ、さっき林はやしさんがそらへのぼっていったのは、プロペラのしかけでしょう。でも、どこへ行いったのかしら。てんにのぼったまま、かえってこないのかしら」

たけしくんが、しんぱいそうにいいますと、しょうねんは、さもおかしそうにわらいだしました。

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