← Library‹ ふしぎな人 3

きむらたけしくんと、いもうとのきみ子こちゃんは、まほうつかいといわれる林はやしさんのうちへあそびに行いって、いろいろふしぎなことをみました。

おしまいには、林はやしさんは、たかい木きのてっぺんから、こうもりのように、そらへとんでいってしまいました。林はやしさんは、にんげんひとりだけをはこぶプロペラをはつめいしていたのです。

そのあとで、林はやしさんとそっくりのすがたをしたしょうねんが、木きのうしろからあらわれて、いままでのふしぎなことをいろいろとせつめいしてくれましたが、たけしくんが、

「林はやしさんは、てんにのぼったまま、かえってこないのかしら」

といいますと、しょうねんは、さもおかしそうにわらいだしました。

「林はやしさんは、もうとっくにうちへかえっているよ。

むこうのはらっぱにおりて、そこのひみつのいり口くちから、うちへかえったのさ。ぼくたちもはいってみよう。

うちの中なかにもふしぎなものがたくさんあるんだよ」

しょうねんがそういってさそいますので、たけしくんときみ子こちゃんは、しょうねんのあとについて、せいようかんの中なかへはいっていきました。

おもいドアをあけて、うすぐらいげんかんにはいり、ひろいろうかをおくのほうへすすんでいきました。

すると、むこうのドアをひらいて、そこからみょうな人ひとがでてきました。

ぴったりみについた、むらさきいろのビロードのふくをきています。そのかたやむねに、ぴかぴかひかるきんいろのかざりがついています。

あたまにはむらさきビロードの三さんかくぼうしをかぶっています。サーカスのきょくげいしのようなかっこうです。

よくみると、それは林はやしさんでした。めがねも口くちひげもなくなっています。あれはつけひげだったのでしょう。

「たけしくん、きみ子こちゃん、こっちへおはいり。おもしろいものをみせてあげるよ」

しょうねんといっしょに、ふたりがそのへやにはいりますと、林はやしさんは、たんすのひきだしから、きいろの中なかに、くろいてんてんのあるけがわを二ふたつとりだしました。

「これはひょうのけがわだよ。たけしくんもきみ子こちゃんも、もうじゅうのひょうになってみたいとはおもわないかね。このけがわをきれば、すぐにひょうになれるんだよ。

目めのところにはガラスがはめてあるから、そとがよくみえるし、口くちの中なかには、ふえがついていて、それをふくと、ひょうとそっくりのうなりごえがでるんだよ」

それをきくと、たけしくんもきみ子こちゃんも、一いちどひょうになってみたくなりました。林はやしさんはふたりのかおいろをみて、手てばやくひょうのかわをきせてくれるのでした。

けがわはぴったりとみについて、たいへんきもちがいいのです。

たけしくんは、へやの中なかをのそのそとはいまわってみました。

そしてけがわの口くちの中なかにあるふえをふきますと、

「ウォーッ、ウォーッ」

という、おそろしいうなりごえがでるのです。

きみ子こちゃんもかわいいめすのひょうになってたのしそうにあるいています。そして、ときどき、ふえをふいているらしく、

「ウォーッ、ウォーッ」

というこえがきこえてきます。

にんげんの足あしと、ひょうのあと足あしとは、まがりかたがちがっているのですが、けがわになにかしかけがしてあるらしく、ちょっとみたのでは、それがわかりません。

うつくしいきょくげいしのふくをきた林はやしさんは、どこからかながいむちをとりだして、

「ピシッ、ピシッ」

と、それをならしました。

「おい、たけしひょうにきみ子こひょう。どうだね、もうじゅうになって、たのしいかね」

そうきかれたので、ふたりは、ふえをふいてこたえました。

「ウォーッ、ウォーッ」

「ウォーッ、ウォーッ」

林はやしさんはわらいだしました。

「わははは……。うまいうまい。すっかりひょうになってしまったね。ところで、わしはもうじゅうつかいだから、きみたちにげいをさせなければならない。さあ、ふたりとも、あと足あしでたちあがって……。

あと足あしでたちあがって、ちんちんをするのだ」

そして、ピシーッとむちがなりました。

たけしくんもきみ子こちゃんも、あと足あしでたち、まえ足あしをもがもが、やっています。

「よろしい。こんどはすこしむずかしいよ。このわの中なかをとびこえるんだ」

林はやしさんは、どこからかはりがねのわをもちだしてきました。

「ほんとうは、このわにわたをまいて、アルコールをしませて火ひをつけるんだ。その火ひのわの中なかをとびこえるんだよ。

いまはれんしゅうだから、火ひはついていない。

いいかい。むこうからはしってきたいきおいで、この中なかをとびこすんだ。さあ、しっかり」

そして、むちがくうちゅうで、ピシーッ、ピシーッとなるのでした。

ふたりともいくどかやりそこないましたが、たけしくんは、とうとうわの中なかをとびぬけることができました。

きみ子こちゃんは、どうしてもできないので、あきらめて、そこへうずくまってしまいました。

「よし。きょうは、れんしゅうはこれまでにしておこう。そして、きみたちをなかまにひきあわせてやるよ」

林はやしさんは、みょうなことをいって、ピシーッとむちをならしました。

「さあ、あるくんだ。わしについてくるのだ」

そういって、さきにたって、ドアのそとにでると、うすぐらいろうかを、もっとおくのほうへはいっていきます。

たけしひょうときみ子こひょうは、のそのそとそのあとからついていきました。

ろうかのおくに、とくべつにがんじょうなドアがありました。林はやしさんは、それをひらいて中なかにはいり、まるでいぬでもよぶように、チョッ、チョッと、したをならしながら、ふたりを手てまねきしました。

ふたりは、なんのきもつかず、そこへはいっていきましたが、あっというまに、へんなものの中なかへおいこまれてしまいました。

てつぼうのはまったろうやのようなものでした。

林はやしさんは、ふたりをそこへおいこむと、いり口くちのとびらにガチャンとかぎをかけました。

それは、もうじゅうをいれるおりだったのです。みると、そのひろいへやには、たくさんのおりがならんでいました。

そして、それらのおりの中なかには、ライオンやとらやくまやひょうや、いろいろなもうじゅうが、べつべつにいれてあるのです。まるでどうぶつえんのようでした。

ひょうになったたけしくんときみ子こちゃんは、そのどうぶつえんのおりの中なかへいれられてしまったのです。

ふとみると、じぶんたちのいれられたおりのすみに、なにか大おおきなものが、うずくまっていました。

ピシーッ。おりのそとで、林はやしさんのむちがなりました。

すると、うずくまっていたやつが、ぬくっとたちあがったではありませんか。

とらです。大おおきなとらです。とらは、「ウォーッ」とうなって、らんらんとかがやく目めで、たけしひょうときみ子こひょうをじろっとにらみつけました。

ああ、たけしくんときみ子こちゃんは、大おおきなとらのいるおりの中なかへいれられたのです。

ほんとうのひょうなら、とらにまけないかもしれませんがこちらはにんげんの子こどもです。とらにかなうわけがありません。

ああ、どうしたらいいのでしょう。

ふたりは、いまにもとらにくいころされてしまうのではないでしょうか。

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