二十めんそうがおどろいたのも、むりはありません。金庫の中のたなが、すっかり取りのけられて、そこに、少年たんていだんのポケット小ぞうが、かくれていたからです。
ポケット小ぞうは、ピストルをかまえて、金庫の中から出てきました。小さな子どもですが、ピストルにはかないません。二十めんそうは、両手をあげて、あとじさりをしました。にげ出そうとすれば、うたれるので、にげるわけにはいきません。
「はははは……。ほうせきばこを、べつのところにかくして、おいらがはいっていたのさ。そして、おじさんのあけるのを待っていたんだ」
ポケット小ぞうは、そういって、金庫のかべにとりつけたベルのボタンをおしました。
「これをおせば、方々でベルの鳴るしかけだ。いまに、みんながやって来るからね。おとなしく待っているんだよ」
それを聞くと、こんどは、二十めんそうのほうが、大声でわらいだしました。
「わはははは……、だめだよ。そのベルは、おれがさっき、線を切っておいた。いくらおしたって、鳴りはしないよ」
ポケット小ぞうは、はっとして顔色をかえました。そのすきを見て、二十めんそうが、いきなりとびかかってきたのです。そして、ポケット小ぞうのピストルを、たたき落としてしまいました。
ポケット小ぞうは、「あっ」といって、ピストルをひろおうとしました。二十めんそうは、それをつきとばして、自分がピストルをひろおうとします。ポケット小ぞうは、すぐにとびついていって、二十めんそうの手にかみつきました。
「あっ、いたいっ」
さすがの二十めんそうも、かみつかれてはかないません。
それから、おとなと子どもの大かくとうになりました。
ポケット小ぞうはすばしこいので、つかまえようとすると、するりとぬけ出してにげ回り、あい手が近づくと、またどこかに食いつくのです。
二十めんそうも、この小さなあい手にてこずっていましたが、そのうち、とうとうポケット小ぞうをつかまえて、大きなハンカチでさるぐつわをはめ、どこからかなわを取り出して、手足を、ぐるぐるとしばってしまいました。
「ちんぴらのくせに、ほねをおらせやがった。だが、もう、どうすることもできまい。ははは……。いつまでも、そこにころがっているがいい。それじゃあ、あばよ」
といって、にげ出そうとしたときです。
「二十めんそうくん、しばらくだったなあ」
という声が聞こえ、ドアのところに、明智たんていのにこにこ顔があらわれました。
二十めんそうは、「あっ」といって、はんたいがわのドアにかけつけると、そのドアが外から開いて、そこに、ピストルをかまえた小林くんが立っていました。
「はははは……。二十めんそうくん。さすがのきみも、もう、どうすることもできないね」
二十めんそうは、ぱっと身をかがめると、ゆかに落ちていたポケット小ぞうのピストルをひろい取って、明智たんていの足に、ねらいをさだめました。