たけしくんときみ子ちゃんは、ふしぎな人の、ふしぎなせいようかんの中で、もうじゅうのひょうのけがわをきせられて、ふたりとも、ひょうになってしまいました。
そして、せいようかんのおくのほうのひろいへやへつれていかれましたが、そこには、たくさんのどうぶつのおりがならんでいました。
そのおりの中には、ライオンやとらやくまや、そのほか、いろいろなもうじゅうが、あるきまわったりねそべったりしていました。
たけしくんときみ子ちゃんの二ひきのひょうも、一つのおりの中へいれられましたが、ふときがつくと、そのおりのすみに、一ぴきの大きなとらがねそべっていました。
その大きなとらは、二ひきのひょうがおりの中へいれられたのをみると、とてもこわい目で、こちらをにらみつけていましたが、まもなく、のっそりとたちあがって、たけしくんときみ子ちゃんのばけているひょうのほうへちかづいてきました。たけしくんもきみ子ちゃんも、あまりのこわさに、きがとおくなりそうでした。
ふたりは、だんだんうしろへさがって、おりのすみにぴったりとからだをくっつけましたが、もうそれいじょうはにげられません。
とらは、のっしのっしとちかよってきます。
そして、らんらんとかがやく目で、ふたりをにらみつけ、きばのある、まっかな口をがっとひらきました。
「ウォーッ……」
おりがびりびりふるえるような、おそろしいうなりごえでした。
そして、とらのまっかな口が、ふたりのあたまの上から、ぐうっとちかづいてきました。ああ、もうだめです。ふたりは、いまにもとらにくわれてしまうのではないでしょうか。
「たすけてくれえっ……」
たけしくんは、しにものぐるいのこえでさけびましたが、けがわをかぶっているので、そのこえが、どこまでとどいたかわかりません。きょろきょろそのへんをみまわしても、きょくげいしのふくをきた、ふしぎな人は、どこへ行ったのか、すがたがみえません。
だれも、たすけには来てくれないのです。
とらの口は、たけしくんのかぶっている、ひょうのあたまの耳のそばにちかづき、あついいきが、耳のあなから、たけしくんのかおにふきつけられました。
とらは、耳たぶにくいついたのかもしれません。
そうして、一ふりされたら、ひょうのあたまがすっとんで、たけしくんのかおがでてしまいます。
ひょうのけがわの中から、にんげんの子どもがとびだしたら、とらは、いっそうおどろいて、たけしくんのかおにくいつくにきまっています。
ああ、もうだめです。いよいよたべころされてしまうのです。
そうおもって、たけしくんがきをうしないそうになっていたときです。
「おい、しんぱいしないでもいいよ」
どこからか、へんなこえがきこえてきました。
びっくりしてみまわしても、どこにもにんげんなんていないのです。
とらが、にんげんのことばをしゃべったとしかおもわれません。そんなばかなことがあるでしょうか。
たけしくんはじぶんのあたまがへんになったのではないかとおもいました。きがちがったのではないかと、ぞっとしました。
すると、そのとき。また、耳のそばで、にんげんのこえがきこえました。
「わしもにんげんだよ。にんげんが、とらのけがわをかぶってばけているんだよ。きみたちとおんなじことさ」
やっぱり、とらがしゃべっていたのです。
いや、とらのけがわの中にいるにんげんがしゃべっていたのです。
「なあんだ、ほんとうのとらじゃなかったのか」
たけしくんは、あまりのことにがっくりして、そこへたおれてしまいました。
はりつめていたきもちが、一ぺんにゆるんだのです。
とらは、きみ子ちゃんの耳にも、おなじことをささやきました。
きみ子ちゃんは、それをきくと、わっとなきだしてしまいました。
いままでは、なくこともできないほどこわかったのです。
そのときです。
ピシッ、ピシッと、ちゅうをきるむちのおとがひびきました。
いつのまにか、きょくげいしのすがたをした、ふしぎな人が、おりのまえにたっていました。
「びっくりさせてすまなかったね。これが、まほうの国のどうぶつえんなのだよ。
さあ、みんなおりからだしてやるよ。
そして、みんなで、もうじゅうのきょくげいをやるんだ」
そういって、むらさきビロードのふくをきた、ふしぎな人は、ライオンやとらやくまのおりをつぎつぎとまわって、そのとびらをひらくのでした。
ライオンやとらやくまが、おりからとびだして、へやの中をのそのそとあるきはじめました。たけしくんやきみ子ちゃんも、おりのそとにでました。
「だいじょうぶだよ。みんな、もうじゅうのけがわの中ににんげんがはいっているんだからね」
とらが、たけしくんたちの耳にささやきました。
でも、むこうからやって来るライオンをみると、たけしくんたちは、おもわずからだがふるえるのでした。
ライオンの大きなかおが、すぐそばへちかよりました。そして、がっと口をひらいて、ウォーッ……とうなってから、やさしいにんげんのこえで、
「あんしんおし。ぼくもにんげんだよ。きみたち二ひきは、かわいいぼうやとじょうちゃんだってな。なかよくしようね」
ライオンは、そういって、えへへ……とわらいました。
ピシッ、ピシッ……。
むちのおとがなりひびいて、ふしぎな人が、ひろいへやのまん中にたちました。
すると、ライオンもとらもくまも、みんなたちどまって、ふしぎな人のほうをじっとみるのでした。
「さあ、いつものきょくげいだ。ライオンの上にくま、とらの上にひょうがのるんだ」
ライオンのせなかにくまがよじのぼって、あと足でたちました。
一ぴきのとらのせなかにたけしくんのひょうが、もう一ぴきのとらのせなかにきみ子ちゃんのひょうが、あぶなっかしくあと足でたちました。
ピシッ……と、むちがなります。
すると、くまをのせたライオン、ひょうをのせたとらたちは、ふしぎな人のまわりをぐるぐるまわってはしりはじめるのでした。
どこからか、おんがくがきこえてきました。きっと、でんちくがなっているのでしょう。そのおんがくにあわせて、ライオンととらは、とっととっととはしるのです。たけしくんたちは、だんだんおもしろくなってきました。
それから、いろいろなきょくげいがつづきました。
ああ、まほうの国のどうぶつえんのおもしろさ。たけしくんもきみ子ちゃんも、ゆめでもみているようなおもいでした。
しかし、ふしぎな人のせいようかんには、まだまだもっとふしぎなものがありました。たけしくんたちは、このつぎには、いったいなにをみせられるのでしょうか。