← Library‹ ふしぎな人 4

たけしくんときみ子こちゃんは、ふしぎな人ひとの、ふしぎなせいようかんの中なかで、もうじゅうのひょうのけがわをきせられて、ふたりとも、ひょうになってしまいました。

そして、せいようかんのおくのほうのひろいへやへつれていかれましたが、そこには、たくさんのどうぶつのおりがならんでいました。

そのおりの中なかには、ライオンやとらやくまや、そのほか、いろいろなもうじゅうが、あるきまわったりねそべったりしていました。

たけしくんときみ子こちゃんの二にひきのひょうも、一ひとつのおりの中なかへいれられましたが、ふときがつくと、そのおりのすみに、一いちぴきの大おおきなとらがねそべっていました。

その大おおきなとらは、二にひきのひょうがおりの中なかへいれられたのをみると、とてもこわい目めで、こちらをにらみつけていましたが、まもなく、のっそりとたちあがって、たけしくんときみ子こちゃんのばけているひょうのほうへちかづいてきました。たけしくんもきみ子こちゃんも、あまりのこわさに、きがとおくなりそうでした。

ふたりは、だんだんうしろへさがって、おりのすみにぴったりとからだをくっつけましたが、もうそれいじょうはにげられません。

とらは、のっしのっしとちかよってきます。

そして、らんらんとかがやく目めで、ふたりをにらみつけ、きばのある、まっかな口くちをがっとひらきました。

「ウォーッ……」

おりがびりびりふるえるような、おそろしいうなりごえでした。

そして、とらのまっかな口くちが、ふたりのあたまの上うえから、ぐうっとちかづいてきました。ああ、もうだめです。ふたりは、いまにもとらにくわれてしまうのではないでしょうか。

「たすけてくれえっ……」

たけしくんは、しにものぐるいのこえでさけびましたが、けがわをかぶっているので、そのこえが、どこまでとどいたかわかりません。きょろきょろそのへんをみまわしても、きょくげいしのふくをきた、ふしぎな人ひとは、どこへ行いったのか、すがたがみえません。

だれも、たすけには来きてくれないのです。

とらの口くちは、たけしくんのかぶっている、ひょうのあたまの耳みみのそばにちかづき、あついいきが、耳みみのあなから、たけしくんのかおにふきつけられました。

とらは、耳みみたぶにくいついたのかもしれません。

そうして、一いちふりされたら、ひょうのあたまがすっとんで、たけしくんのかおがでてしまいます。

ひょうのけがわの中なかから、にんげんの子こどもがとびだしたら、とらは、いっそうおどろいて、たけしくんのかおにくいつくにきまっています。

ああ、もうだめです。いよいよたべころされてしまうのです。

そうおもって、たけしくんがきをうしないそうになっていたときです。

「おい、しんぱいしないでもいいよ」

どこからか、へんなこえがきこえてきました。

びっくりしてみまわしても、どこにもにんげんなんていないのです。

とらが、にんげんのことばをしゃべったとしかおもわれません。そんなばかなことがあるでしょうか。

たけしくんはじぶんのあたまがへんになったのではないかとおもいました。きがちがったのではないかと、ぞっとしました。

すると、そのとき。また、耳みみのそばで、にんげんのこえがきこえました。

「わしもにんげんだよ。にんげんが、とらのけがわをかぶってばけているんだよ。きみたちとおんなじことさ」

やっぱり、とらがしゃべっていたのです。

いや、とらのけがわの中なかにいるにんげんがしゃべっていたのです。

「なあんだ、ほんとうのとらじゃなかったのか」

たけしくんは、あまりのことにがっくりして、そこへたおれてしまいました。

はりつめていたきもちが、一いちぺんにゆるんだのです。

とらは、きみ子こちゃんの耳みみにも、おなじことをささやきました。

きみ子こちゃんは、それをきくと、わっとなきだしてしまいました。

いままでは、なくこともできないほどこわかったのです。

そのときです。

ピシッ、ピシッと、ちゅうをきるむちのおとがひびきました。

いつのまにか、きょくげいしのすがたをした、ふしぎな人ひとが、おりのまえにたっていました。

「びっくりさせてすまなかったね。これが、まほうの国くにのどうぶつえんなのだよ。

さあ、みんなおりからだしてやるよ。

そして、みんなで、もうじゅうのきょくげいをやるんだ」

そういって、むらさきビロードのふくをきた、ふしぎな人ひとは、ライオンやとらやくまのおりをつぎつぎとまわって、そのとびらをひらくのでした。

ライオンやとらやくまが、おりからとびだして、へやの中なかをのそのそとあるきはじめました。たけしくんやきみ子こちゃんも、おりのそとにでました。

「だいじょうぶだよ。みんな、もうじゅうのけがわの中なかににんげんがはいっているんだからね」

とらが、たけしくんたちの耳みみにささやきました。

でも、むこうからやって来くるライオンをみると、たけしくんたちは、おもわずからだがふるえるのでした。

ライオンの大おおきなかおが、すぐそばへちかよりました。そして、がっと口くちをひらいて、ウォーッ……とうなってから、やさしいにんげんのこえで、

「あんしんおし。ぼくもにんげんだよ。きみたち二にひきは、かわいいぼうやとじょうちゃんだってな。なかよくしようね」

ライオンは、そういって、えへへ……とわらいました。

ピシッ、ピシッ……。

むちのおとがなりひびいて、ふしぎな人ひとが、ひろいへやのまん中なかにたちました。

すると、ライオンもとらもくまも、みんなたちどまって、ふしぎな人ひとのほうをじっとみるのでした。

「さあ、いつものきょくげいだ。ライオンの上うえにくま、とらの上うえにひょうがのるんだ」

ライオンのせなかにくまがよじのぼって、あと足あしでたちました。

一いちぴきのとらのせなかにたけしくんのひょうが、もう一いちぴきのとらのせなかにきみ子こちゃんのひょうが、あぶなっかしくあと足あしでたちました。

ピシッ……と、むちがなります。

すると、くまをのせたライオン、ひょうをのせたとらたちは、ふしぎな人ひとのまわりをぐるぐるまわってはしりはじめるのでした。

どこからか、おんがくがきこえてきました。きっと、でんちくがなっているのでしょう。そのおんがくにあわせて、ライオンととらは、とっととっととはしるのです。たけしくんたちは、だんだんおもしろくなってきました。

それから、いろいろなきょくげいがつづきました。

ああ、まほうの国くにのどうぶつえんのおもしろさ。たけしくんもきみ子こちゃんも、ゆめでもみているようなおもいでした。

しかし、ふしぎな人ひとのせいようかんには、まだまだもっとふしぎなものがありました。たけしくんたちは、このつぎには、いったいなにをみせられるのでしょうか。

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