さんざんあそんだあとで、林さんは、どうぶつにばけている人たちに、かわをぬいで、じぶんのへやへ行ってやすむようにいいつけました。
それから、たけしくんときみ子ちゃんに、ひょうのかわをぬがせ、べつのへやへつれていって、「ちょっと、ここでまっているのだよ」といって、どこかへでていってしまいました。
しばらくすると、ドアがあいて、きみのわるい人がはいってきました。
ぴったりからだにくっついたくろいシャツと、くろいズボンをつけ、手ぶくろもくつも、あたまにかぶったベレーぼうも、みんなくろずくめです。
よくみると、それは林さんでした。いつのまにか、すっかりちがったすがたになって、もどってきたのです。
「しんぱいしなくてもいい。わたしだよ。ただ、ちょっとふくをきかえただけさ。さあ、これからもっとおもしろいものをみせてあげようね」
林さんは、そういって、にこにこわらいました。
すると、そのとき、あけたままになっていたドアから、一ぴきのさるが、ぴょんぴょんととびこんできました。
そのさるは、林さんのからだにとびついて、耳に口をちかづけ、なにかぼそぼそとささやきました。
それは、さっき、サーカスごっこをしたどうぶつたちの中にいたさるでした。ですから、ほんとうのさるではなくて、さるのかわをきたにんげんです。
それも、あまり大きなさるではありませんから、中にはいっているのは、小さい子どもにちがいありません。
さるがなにをささやいたのか、たけしくんたちにはすこしもきこえませんでしたが、それをきくと、林さんはこわいかおになりました。
そして、
「なにっ、あけちたんていと小林しょうねんがやって来たって。そして、けいかんたいが、このうちをとりかこんだというのか。それはほんとうかっ」
とどなりました。
「ほんとうです。はやくにげないと、いまにもここへやって来ますよ」
さるが、こんどはかんだかいこえでいいました。やっぱり子どものこえです。
「よしっ。それじゃ、さいごのおくの手だ。あとはたのんだぞ。やつらが来たら、わしはどこへ行ったかわからないというのだ。このふたりの子どもは、わしがつれていく。だいじな人じちだからな」
くろいすがたをした林さんは、たけしくんときみ子ちゃんの手をひっぱって、へやのそとへとびだしました。
たけしくんたちは、さるのいったことをきいて、たいへんだとおもいましたが、あい手はちからのつよいおとなですから、どうすることもできません。ないても、わめいても、だれも、たすけに来てくれるものはないのです。
林さんは、ふたりの手をひっぱって、ろうかをはしっていきましたが、じきにろうかの行きどまりまで来てしまいました。
そこには、かべがあって、もうむこうへ行けませんから、あともどりするのかとおもっていますと、林さんは、足で、かべの下のほうをぐっとおしました。
そこに、ひみつのボタンがあったのです。
そのボタンをおすと、でんきじかけで、かべがすうっとひらくようになっていたのです。そして、まえのかべに、ぽっかりとくらいあながあきました。
林さんは、たけしくんたちの手をにぎったまま、そのまっくらなあなの中にはいっていきます。
三人が中にはいると、かべは、もとのようにぴったりとしまってしまいました。
「しんぱいしなくてもいいよ。きみたちをどうもしないからね。さあ、おじさんがだいてやるよ。くらくて、足もとがあぶないからね」
林さんは、そういって、たけしくんときみ子ちゃんを、りょうわきにかかえるようにしてだきあげたかとおもうと、まっくらなかいだんのようなところをことこととおりはじめました。
いままでいたへやは一かいですから、そこからかいだんをおりれば、ちのそこへはいっていくのです。ちかしつでしょうか。
まっくらで、なにがなんだかわかりませんが、林さんは、かいだんをおりたところで、たけしくんたちをおろしました。そして、なにかごそごそやっていましたが、きゅうに下のほうから、ぱっとひかりがさしてきました。
足の下に、さしわたし五十センチほどの、まるいあながあいて、その下から、あかるいひかりがさしているのです。
「さあ、ここをおりるんだ。このあなの中に、てつのはしごがかかっているから、それをおりなさい。おじさんは、あとからはいるからね」
もうここまで来ては、にげようとしても、にげられるものではありません。
いわれるままにあなの中へおりていくほかはないのです。たけしくんときみ子ちゃんは、ほそいてつのはしごに足をかけて、あかるいあなの中へおりていきました。
ひどくせまいへやです。へんなきかいのようなものが、ごちゃごちゃとならんでいて、どちらへもいけないのです。いったいここはどこなのでしょう。
あたまの上で、パタンとおとがしました。林さんが、てつばしごをおりながら、まるいあなのふたをしめたのです。しめたばかりではありません。あなのまわりについている、大きなてつのねじをぐいぐいしめつけて、かたくふたをしてからおりてきました。
「はははは……。びっくりしているね。いまにわかるよ」
林さんは、そういって、ごちゃごちゃしたきかいの中へはいっていって、そこにある、小さないすにこしかけました。すると、へやがゆらゆらとうごいて、なんだか、エレベーターにでものっているようなきもちになりました。
「いいかい。いま、中のでんきをけして、そとのでんきをつけるからね。そうすると、おもしろいものがみえるよ」
しばらくゆらゆらとゆれていたあとで、へやのでんきがぱっときえて、すぐ目のまえの四かくなガラスまどのそとが、ぼうっとあかるくなりました。
ああ、ごらんなさい。そのひかりの中をなん十ぴきという小さなさかなが、ぎんいろのうろこをぴかぴかさせて、およいでいるではありませんか。これは、どうしたというのでしょうか。ここはすいぞくかんなのでしょうか。それとも……。