← Library‹ ふしぎな人 5

さんざんあそんだあとで、林はやしさんは、どうぶつにばけている人ひとたちに、かわをぬいで、じぶんのへやへ行いってやすむようにいいつけました。

それから、たけしくんときみ子こちゃんに、ひょうのかわをぬがせ、べつのへやへつれていって、「ちょっと、ここでまっているのだよ」といって、どこかへでていってしまいました。

しばらくすると、ドアがあいて、きみのわるい人ひとがはいってきました。

ぴったりからだにくっついたくろいシャツと、くろいズボンをつけ、手てぶくろもくつも、あたまにかぶったベレーぼうも、みんなくろずくめです。

よくみると、それは林はやしさんでした。いつのまにか、すっかりちがったすがたになって、もどってきたのです。

「しんぱいしなくてもいい。わたしだよ。ただ、ちょっとふくをきかえただけさ。さあ、これからもっとおもしろいものをみせてあげようね」

林はやしさんは、そういって、にこにこわらいました。

すると、そのとき、あけたままになっていたドアから、一いちぴきのさるが、ぴょんぴょんととびこんできました。

そのさるは、林はやしさんのからだにとびついて、耳みみに口くちをちかづけ、なにかぼそぼそとささやきました。

それは、さっき、サーカスごっこをしたどうぶつたちの中なかにいたさるでした。ですから、ほんとうのさるではなくて、さるのかわをきたにんげんです。

それも、あまり大おおきなさるではありませんから、中なかにはいっているのは、小ちいさい子こどもにちがいありません。

さるがなにをささやいたのか、たけしくんたちにはすこしもきこえませんでしたが、それをきくと、林はやしさんはこわいかおになりました。

そして、

「なにっ、あけちたんていと小林こばやししょうねんがやって来きたって。そして、けいかんたいが、このうちをとりかこんだというのか。それはほんとうかっ」

とどなりました。

「ほんとうです。はやくにげないと、いまにもここへやって来きますよ」

さるが、こんどはかんだかいこえでいいました。やっぱり子こどものこえです。

「よしっ。それじゃ、さいごのおくの手てだ。あとはたのんだぞ。やつらが来きたら、わしはどこへ行いったかわからないというのだ。このふたりの子こどもは、わしがつれていく。だいじな人ひとじちだからな」

くろいすがたをした林はやしさんは、たけしくんときみ子こちゃんの手てをひっぱって、へやのそとへとびだしました。

たけしくんたちは、さるのいったことをきいて、たいへんだとおもいましたが、あい手てはちからのつよいおとなですから、どうすることもできません。ないても、わめいても、だれも、たすけに来きてくれるものはないのです。

林はやしさんは、ふたりの手てをひっぱって、ろうかをはしっていきましたが、じきにろうかの行いきどまりまで来きてしまいました。

そこには、かべがあって、もうむこうへ行いけませんから、あともどりするのかとおもっていますと、林はやしさんは、足あしで、かべの下したのほうをぐっとおしました。

そこに、ひみつのボタンがあったのです。

そのボタンをおすと、でんきじかけで、かべがすうっとひらくようになっていたのです。そして、まえのかべに、ぽっかりとくらいあながあきました。

林はやしさんは、たけしくんたちの手てをにぎったまま、そのまっくらなあなの中なかにはいっていきます。

三さん人にんが中なかにはいると、かべは、もとのようにぴったりとしまってしまいました。

「しんぱいしなくてもいいよ。きみたちをどうもしないからね。さあ、おじさんがだいてやるよ。くらくて、足あしもとがあぶないからね」

林はやしさんは、そういって、たけしくんときみ子こちゃんを、りょうわきにかかえるようにしてだきあげたかとおもうと、まっくらなかいだんのようなところをことこととおりはじめました。

いままでいたへやは一いちかいですから、そこからかいだんをおりれば、ちのそこへはいっていくのです。ちかしつでしょうか。

まっくらで、なにがなんだかわかりませんが、林はやしさんは、かいだんをおりたところで、たけしくんたちをおろしました。そして、なにかごそごそやっていましたが、きゅうに下したのほうから、ぱっとひかりがさしてきました。

足あしの下したに、さしわたし五十ごじゅうセンチほどの、まるいあながあいて、その下したから、あかるいひかりがさしているのです。

「さあ、ここをおりるんだ。このあなの中なかに、てつのはしごがかかっているから、それをおりなさい。おじさんは、あとからはいるからね」

もうここまで来きては、にげようとしても、にげられるものではありません。

いわれるままにあなの中なかへおりていくほかはないのです。たけしくんときみ子こちゃんは、ほそいてつのはしごに足あしをかけて、あかるいあなの中なかへおりていきました。

ひどくせまいへやです。へんなきかいのようなものが、ごちゃごちゃとならんでいて、どちらへもいけないのです。いったいここはどこなのでしょう。

あたまの上うえで、パタンとおとがしました。林はやしさんが、てつばしごをおりながら、まるいあなのふたをしめたのです。しめたばかりではありません。あなのまわりについている、大おおきなてつのねじをぐいぐいしめつけて、かたくふたをしてからおりてきました。

「はははは……。びっくりしているね。いまにわかるよ」

林はやしさんは、そういって、ごちゃごちゃしたきかいの中なかへはいっていって、そこにある、小ちいさないすにこしかけました。すると、へやがゆらゆらとうごいて、なんだか、エレベーターにでものっているようなきもちになりました。

「いいかい。いま、中なかのでんきをけして、そとのでんきをつけるからね。そうすると、おもしろいものがみえるよ」

しばらくゆらゆらとゆれていたあとで、へやのでんきがぱっときえて、すぐ目めのまえの四よんかくなガラスまどのそとが、ぼうっとあかるくなりました。

ああ、ごらんなさい。そのひかりの中なかをなん十じゅうぴきという小ちいさなさかなが、ぎんいろのうろこをぴかぴかさせて、およいでいるではありませんか。これは、どうしたというのでしょうか。ここはすいぞくかんなのでしょうか。それとも……。

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