← Library‹ ふしぎな人 6

いやそれはすいぞくかんではありません。もっともっと、びっくりするようなものだったのです。

そのとき、くろシャツにベレーぼうの林はやしさんは、たけしくんたちに、こんなことをいいました。

「おじさんは、ちょっと上うえへ行いってくるからね。ここにじっとしているんだよ。ちっともこわいことはないからね」

そして、また、へやがゆらゆらゆれて、やがてぴたりととまりました。

すると、まどの外そとの光ひかりがきえて、へやの中なかのでんとうがつきました。

林はやしさんは、あたまの上うえのまるいあなのしまりをはずして、そこから上うえへでていきました。あとには、たけしくんたちふたりだけがのこったのです。

ああ、これからどんなことがおこるのでしょうか。

林はやしさんのせいようかんには、おおぜいのおまわりさんがふみこんで、へやからへやをさがしまわっていました。

めいたんていあけちこごろうと、じょしゅの小林こばやししょうねんは、林はやしさんのへやにはいって、あたりを見みまわしました。すると、かべのそばにある、大おおきなようふくだんすの中なかで、コツコツと、みょうな音おとがしているではありませんか。

あけちたんていは、つかつかと、ようふくだんすにちかづいて、そのとびらをぱっとひらきました。

すると、その中なかに、ひとりの男おとこがたっていたのです。ぴったりとからだについた、くろいシャツとズボン下したに、ベレーぼうをかぶった男おとこ。

林はやしさんです。林はやしさんは、いつのまにか、ようふくだんすの中なかにかくれていたのです。

「ははははは……。あけちくん、ひさしぶりだね。やっと、おれのかくれががわかった、というわけか」

林はやしさんが、みょうなことをいいました。

「そうだ。ぼくは、とうとうかいじん二十にじゅうめんそうのすみかをつきとめたのだ。それとも、かいじん四十よんじゅうめんそうとよんだほうがおきにいるかね」

あけちたんていは、林はやしさんのかおをまっこうからゆびさしながら、はげしくいいました。

ああ、なんということでしょう。たけしくんのおとうさんが、いい人ひとだとあんしんしていた林はやしさんが、きくもおそろしいかいじん四十よんじゅうめんそうだったとは。

このかいじんは、へんそうのだいめいじんで、四十よんじゅうもちがったかおをもっているというので、四十よんじゅうめんそうとあだ名なされていたのです。まほうつかいのような大おおどろぼうです。

「木村きむらたけしくんときみ子こちゃんは、どこにいるのだ。きみは、ふたりの子こどもを人ひとじちにして、木村きむらさんのもっている、たくさんのほうせきをとろうとしているのだ。木村きむらさんが、きみをしんようしているのをいいことにして、ふたりの子こどもをさらってしまったのだ」

あけちたんていがいいますと、四十よんじゅうめんそうの林はやしさんはせせらわらって……。

「そのとおりだ。さすがにあけちくんは目めがたかいよ。ははは……」

そのわらい声ごえがだんだんかすかになって、四十よんじゅうめんそうのすがたは、すうっときえていきました。

あけちたんていは、いきなりようふくだんすの中なかへふみこみました。

しかし、四十よんじゅうめんそうは、もうどこにもおりません。ゆうれいのようにきえてしまったのです。

あけちたんていは、たくさんさがっているようふくをかきわけて、うしろのいたをさぐっていましたが、「あっ、ここにかくし戸とがある」とさけびました。

そして、力ちからまかせに、そのいたをおしますと、かくし戸とがぱっとひらきました。

そのむこうはまっくらなあなです。これも、ちかしつへおりるひみつのぬけ道みちなのでしょう。

「ピリピリピリピリ……」

小林こばやししょうねんが、よび子このふえをふきならしました。それをきいて、おまわりさんがかけつけてきました。

「四十よんじゅうめんそうは、このぬけあなからにげたんだ。みんな、ぼくのあとについてきたまえ」

あけちたんていは、そうさけんで、くらいあなの中なかへとびこんでいきました。小林こばやししょうねんやおまわりさんも、あとにつづきます。

あなの中なかには下したへおりるコンクリートのかいだんがついていました。

それをおりきると、トンネルのようなよこ道みちがあって、むこうが、ぼうっとあかるくなっています。

その光ひかりの中なかを、まっくろな人ひとかげがさっとよこ切きりました。

「あっ、あそこにいる。あいつが四十よんじゅうめんそうだ」

あけちたんていと小林こばやししょうねんと、四よん人にんのおまわりさんが、おそろしいいきおいでおっかけました。

トンネルをでたところに、ちょっとひろいばしょがあります。四十よんじゅうめんそうは、そこにまちかまえていました。

「ふたりの子こどもは、たしかにあずかっている。だが、きみたちには、ぜったいにとりもどせないのだ」

四十よんじゅうめんそうは、そうさけんだかと思おもうと……。

足あしもとにひらいていたまるいあなの中なかにさっととびこんで、下したから、てつのふたをぴったりとしめてしまいました。

あけちたんていは、「あっ」といって、あなのふちへかけつけました。

すると、てつのふたは、すうっと下したへしずんでいって、あとには、くろい水みずが、ひたひたとさざなみをたてているばかりです。

「あっ、せんこうていだっ」

林はやしさんのひろいやしきは、すみだ川かわととうきょうこうのさかい目めの川かわぎしにあったのです。ですから、ちかしつの下したのほうには、川かわの水みずがながれこむようになっていて、そこに、小こがたのせんこうていがつないであったのです。

四十よんじゅうめんそうは、たけしくんときみ子こちゃんをつれて、そのせんこうていで、ひろい海うみへにげだしてしまったのです。

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