僕は、アッツ島守備隊、山崎部隊長はじめ二千数百人の勇士が、何十倍という敵を相手に一歩もしりぞかず、一人残らず討死されたという放送をきいて、涙を流した。そして、僕もやがて兵隊さんになったら、きっと、あの勇士の方々のような、えらい兵隊さんになるんだと、かたく心にちかった。
日本軍が強いのは、このようなりっぱな心をもった兵隊さんが、すぐれた兵器をもって戦っているからだ。今の戦争は科学戦だ。ことに、飛行機で制空権をにぎらなくては勝てないのだ。それから、兵器や食糧を送る船が十分でなくては、いけないのだ。
だから、今なによりも第一につくらなければならないものは、飛行機と船だということを、航空本部の小父さんがおっしゃった。
飛行機をつくるには、アルミニウムがいる。銅がいる。それから、金属を切ったり、けずったりする工作機械がいる。そこで、航空本部の小父さんは、僕をそういう飛行機のもとになるようなものをつくっている工場へつれて行って、くわしく見せてくださった。
戦争は前線の兵隊さんだけがやっているのではない。内地の工場でも戦争をしているのだ。みんながこんなにいっしょうけんめいやっている、そして、飛行機の原料は、毎日、こんなにどっさりつくり出されているのだということを見せてくださった。
僕は日本一の工場をいくつも見せてもらって、ほんとうにたのもしく思った。そして、飛行機の原料がこんなにたくさんできていることを、みんなに知らせたいと思った。
まず第一に知らせたいのは、アルミニウムの工場だ。アルミニウムのような目方の軽い金属のことを軽金属という。僕は○○軽金属株式会社の工場を見せていただいたが、その大じかけなのに、すっかりおどろいてしまった。日本一の大工場だ。いや、世界一の大工場だと、航空本部の小父さんがおっしゃった。
飛行機のあの銀色に光る機体は、ひじょうに軽くて、しかも鋼鉄のようにかたいジュラルミンという金属でできている。そのジュラルミンの九割五分はアルミニウムなのだ。飛行機の原料になるアルミニウムは、僕らの家にある鍋や湯わかしや弁当箱などよりも、ずっと質のよい、まじりけのないものでなくてはいけない。それをこの工場でつくっているのだ。
アルミニウムの原料は、ボーキサイトという、まっ赤な色の土のようなものだ。それが大東亜共栄圏にはいくらでもある。工場は港の中にあって、共栄圏の産地からボーキサイトをつんできた一万トン以上の大きな船が、すぐ工場のさんばしに横づけになって、荷あげをしている。そのへんの広っぱは、ボーキサイトの山だ。
ここの工場では、ボーキサイトからアルミナというまっ白な粉をつくるまでの仕事をやっている。見わたすかぎりの広い敷地に、大きな建物がたくさんならんでいる。その中には、鉄の大煙突を横たおしにしたようなキルンという炉が何本もならんでいるところもある。ボーキサイトをとかした液をためておく、畳十畳じきもあるような鉄の丸いタンクが、まるで碁盤に碁石をおいたように、かぞえきれないほどならんでいる建物もある。何千人という工員がいるのだそうだが、機械のしかけがあまり大きいので、人がどこにいるかわからないくらいだ。
ここでできたアルミナというまっ白な粉を袋につめて、近くにある別の工場へはこんで、そこで、アルミニウムをつくるのだ。その工場も、じつに広い敷地で、そこだけで使う電気をおこすために、大きな水力発電所までできている。
一トンのアルミニウムをつくるのに、四トンのボーキサイトと四トンの石炭と、二万一千キロワットの電気がいるのだと、工場長の小父さんが教えてくださった。この電気は、五十ワットの電燈なら四十二万個もつくわけだ。アルミニウム一トンについて、それだけいるのだから、この工場の水力発電所が、どんなに大じかけだかということがわかる。
アルミナの粉を電気のひじょうに高い熱でとかして、アルミニウムを取るのだ。この工場には、その電気炉がかぞえきれないほどならんでいる。
電気炉の中でまっ赤にとけたアルミニウムの液を、鋳型につぎこんで、しばらくおくと、ぴかぴか銀色に光った、太い四角な棒ができる。その棒が山のようにつみあげてあるのだ。
これを別の会社の工場にはこんで、かたいジュラルミンにして、それから飛行機製作工場で、いろいろな形に切ったり、まげたり、けずったりして、それをつなぎ合わせて、飛行機の胴体や翼を組み立てるのだ。
僕はアルミニウムの工場が、こんなに大じかけだとは知らなかったので、ほんとうにびっくりした。しかも、日本にはこんなアルミニウム工場が、まだほかにいくつもあるのだときかされて、すっかりうれしくなってしまった。
「これなら、日本軍の飛行機は大丈夫ですね」というと、航空本部の小父さんは、「うん、そうだよ。安心したかい」と、にこにこお笑いになった。